rain

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2025年6月5日。 鹿児島県の奄美大島では6月1日未明から、突然の大雨が降り続いていた。原因は全くわからず5日現在も降り続き、やむ気配はまるでない。梅雨入りしていたとはいえ、5月末にはからからの晴天が何日か続いていたのだから、なお不思議だ。 元々奄美地方は降水量が多いことで有名で、中でも6月はダントツに雨が降る。それでも猛烈な豪雨が、5日間も降りっぱなしという現象は前代未聞で、当然ながら既に浸水や洪水などの被害が相次ぎ、人々は高い建物などに避難を余儀なくされた。政府も自衛隊を現地に続々と派遣し、隊員たちはけが人の救護や水と食糧の供給に当たっている。 「なぜこんなことに…。早く何とかしなければ島が、島民の命が危ない」 30代前半くらいの青年が、降りしきる雨を避難所の窓越しから見て呟いた。 彼の名は葛城(かつらぎ)ヒロ。 生まれも育ちもここ奄美で、ずっと島で過ごしてきた。なので雨が多いのは慣れっこだし、度々土砂崩れなどの災害も経験してきた。 しかし今回の大雨は、過去の比ではないことは明らかだし、弱まる様子もなく滝のように降り続いている。このままでは、本当に島ごと流されてしまうのではないか。 ヒロはまだ辛うじて繋がるネットを駆使しながら、独自にこの豪雨が降り続く原因と、雨をやませる解決策を探ることにした。
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