7章

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補給拠点には、すでにガンシップが1機待機していた。 対地ミサイルの換装のため、周囲を作業員が行き来している。 簡単な補給を終え、クルーの誘導で、後部ハッチから手狭な搭乗スペースに歩兵22人が詰め込まれた。 すぐ近くで爆発音。 歩兵戦闘車の車列が、サマエルと反対の方向へ走っていった。 包囲線が後退を続け、拠点のすぐ側まで押し込まれているらしい。 戦闘時間の経過に比例して高くなる放射線量に、より広範囲のビーストが引きつけられている。 「離陸する」 パイロットの一声で、機体が浮いた。 他の7個小隊からも、同様に移動開始の連絡が入る。 「第85小隊、離陸完了」 「こちら第92小隊、同じく離陸した」 「第25小隊、降下地点まで2分」 「こちら第10小隊。 貴官たちと戦えて光栄だ」 第10小隊だ、という声が味方から上がった。 チェンナイ事件を共に乗り越えたあの小隊も、18人の兵士を残して気孔へと移動中だ。 他の部隊も精鋭中の精鋭。 西日に照らされた8機のガンシップがサマエルに迫る。 「激しい揺れに注意。 つかまれ」 パイロットの声に一瞬遅れ、爆風と衝撃波が機体を横殴りにした。 最後の巡航ミサイルだ。 同時に、降下開始の合図でもある。 「降下地点まで10秒、ハッチ開放。 幸運を」 地上200メートルを吹く風が、容赦なく搭乗スペースに入り込んできた。 真下にはサマエルの天頂部と、まだ再生し切れていない管足の草原。 「この高さなら、ジェットの逆噴射と緩衝材が着地の衝撃をあらかた吸い取ってくれる! 勇気を持って飛び降りろ! 俺に続け、世界を救うぞ!」 (救うぞー!) 言い終わらないうちにハッチの縁に強く踏み込み、四肢を広げて空中に身体を投げ出す。 空気抵抗が全身を叩く。 下から這い上がってくる無傷だった数本の管足を、高速で通過した戦闘機のガトリング砲が吹き飛ばした。 ガンシップが離脱の報告を入れた。 無事に全員が飛び降りたようだ。 (俺と出会う直前の戦いみたいだ) 「お前そんな記憶まで持ってるのか」 (カマキリに腹を串刺しにされたやつね) 「あの時と違って、今日の身体はよく動く」 ブレインの高らかな笑い声。 急速に近づくごつごつとした外殻の表面。 ジェットを最大出力で蒸かし、受身をとって着地の衝撃をいなす。 目の前には、ひくひくと脈動する真っ暗な気孔。 「第85小隊侵入開始!」
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