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「実行しましょう」
回線が回復したあと、一連の考えを聞いたイコルギア司令は即答した。
「貴方の考えは何となく予想できたので通信が途切れてから少しばかり検証してみましたが、十分に可能です。 というより、もうこれしかない」
「本当ですか。 でも……」
「貴方の心配していた接近方法は、ガンシップからの低空降下が可能にしてくれます。 3度目の巡航ミサイルによって隙を作れば、管足によってガンシップが落とされることも無いはずです」
彼の背後で忙しなく行き交う足音が通信越しに聞こえた。
しがない一兵士の馬鹿げたアイデアを、優秀な軍の頭脳たちが具現化しようと必死に動いている。
何か熱いものが込み上げてきた。
人間は負けない。
窮地に立たされてなお、盲信に近い何かがあった。
「作戦工程をデータアウトし終えました。 一度全ての小隊を下がらせ、各補給拠点にガンシップを手配します」
今までに聞いたことがない力強い声と共に通信が終了し、全体回線にて再びイコルギア司令の声。
「CPより全小隊及び前線拠点へ。 本時を以て第1フェーズを中断し、現状を打開しうる新たな作戦を行う。 詳細は各小隊長へ転送した」
地図上では、歩兵が近くの拠点へ、機械化小隊が封鎖部隊の援護へ、それぞれすぐさま下がっていった。
降下時の半分に満たない生存者の数。
そんな絶望の中でも、彼らは希望を捨てていない。
もちろん俺も、ブレインも、そして小隊の仲間もだ。
「作戦データの通り、俺たちは生存率の高い7つの小隊と共に、気孔からサマエルの中へ侵入する。 俺たちなら絶対にできる。 さあ、ガンシップまで急げ!」
ブレインの特攻にも等しい策が、戦域全体に僅かな希望の光を灯し始めていた。
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