7章

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グレネードをふたつ投げ入れてから、先陣を切って穴の中へ飛び込む。 内部は暗く、外から見るより広い。 天井も高い。 点在する気孔から、かすかに光が差し込んでいる。 絶命後も天蓋は形を保つだろうというブレインとCPの見解があってもなお、脱出できるか不安だ。 「よし、進むぞ」 全員が降りたことを確認。 銃口のサーチライトを点け、警戒隊列を組みながら進む。 足元は粘液のようなものに覆われ、滑りやすい。 腸内環境のように狭い肉の通路を、急ぎ足で駆け抜ける。 外よりも濃い放射線が、前線司令部やCPとの通信を妨げている。 「待て」 前方から湿った足音。 人のものでは無い。 サーチライトが音の正体を照らす。 四足歩行の魚のようなビーストだ。 腹部に管足によるものと思われる数本の穴が空いていた。 「撃てっ! こっちに来させるな!」 狂ったように突進するビーストへ、ありったけの弾丸を撃ち込む。 マズルフラッシュが反射して、周囲の肉壁がぬらぬらときらめいた。 この空間は横に狭く回避ができない以上、アウトレンジから敵を仕留めなければ確実に死傷者が出てしまう。 俺に触るギリギリのところで、多数の銃弾を受けたビーストが崩れ落ちた。 「すぐにリロードだ」 「……小隊長! 後方から別の敵が、うわぁっ!」 「応答しろ! 後続はどうなってる!?」 列の後方で闇雲な射撃音。 何とも分からない液体が飛び散り、2名が死亡したとの報告が入った。 停滞していたら全滅だ。 進むしかない。 嘆く暇はない。 「誰かがいつでも撃てるようにするんだ。 全方位をよく見ろ」 と、上空から指していた光がふと遮られた。 気孔から何か落ちてくる。 サーチライトがソレを照らした。 ぐったりしたビーストと、その巨体に巻き付く、数本の管足。 「退避!」 仲間の絶叫が、ビーストが地面に叩きつけられた音と重なった。 隊列の真中に敵が落ちた。 「おい、誰かが下敷きになった」 「何人だ、報告を!」 「まだ生きてる! 撃て、管足もだ!」 現場が混乱に包まれた。 隊が真っ二つに分断されてしまったのだ。 (やべぇよアッシュ) 「くそ……各自で戦うしかない。 危なくなったら浄化グレネードで生還しろ」 気孔の内部に侵入してたったの300秒。 すでに仲間が6人死に、2人が重症により生還。 分断されたこちら側の人数は僅か8人だ。 それでも進むしかない、どんな結末になろうとも敵の臓器を目指すしかない。
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