3章

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「全てが新種……」 無意識に呟いてみる。 参謀が溜めに溜めた末に発したこの情報は、たいして戦闘に支障がないような気もするし、人類を絶望に陥れる重大な啓示のようにも思えた。 要するに、情報の全容がよく分からない。 どんな形をしているか、どんな意味を持っているか、聞いてすぐに理解できないのだ。 目の前にでかでかと映し出されている異形たちが、禍々しく嗤ったような錯覚を覚える。 「それは……何を意味するんで?」 俺の気持ちを別の兵士が代弁する。 「進化です」 返ってきた答えは至ってシンプル。 しかしイコルギアが放ったこの一言は、得体の知れない恐怖を孕んでいた。 彼の言葉を聞いて顔を強張らせる者と首を(かし)げる者に、反応が二極化した。 「奴らが繁殖の過程で徐々に進化しているのは皆さんもご存知でしょう。 現に奴らが汚染した地球で生活できているのも、進化の過程で放射線への耐性を獲得したからです」 理解に苦しんでいる人間のために、イコルギアは丁寧な説明を加え始めた。 「核の一斉発射が起きた5年前のあの日、一瞬にして数百種類ものビーストが生まれました。 カンブリア紀の生命大爆発の再来は、本物の大爆発によって引き起こされたわけです」 そこでイコルギアは聴衆へと顔を向け、不謹慎で大して上手くもない冗談がまるでウケなかったことを確認し、スクリーンへと視線を戻す。 彼の思考操作によって、今度は画面左端の巨大なヤドカリのようなビーストの画像が点灯した。 「今月5日に討伐した新種、コードネーム『テンプル厶』ですが、その原種となる存在を我が小隊は先月討伐しています」 覚えていらっしゃる方はいますかと、彼は俺たちへ問いかける。
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