3章

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「何言ってんだお前」 不自然にならない程度に俯き、声を潜めて悪態をつく。 そんな俺なんか意に介さず、奴の声はいつもと変わらない声量で脳内に響く。 「メガネの人、あの化け物を"ビースト"っていう分類で一括りにしてるだろ。 だから、どんな化け物に対しても、腹や頭を狙うのが効果的だって言ってるんだよな」 奴はけろりと言ってのける。 分類学上では確かに、ビーストは哺乳類や爬虫類などとは差別化され、単一の種として扱われている。 高い放射線への耐性、破壊されたDNAの自己修復能力、放射線をエネルギーへと変換する器官。 これらの特徴を持つ生物は、どんな姿形をしていようとビースト。 変異元、つまり放射線を浴びて変異する前の生き物が違うのにも関わらず、だ。 虫から変異したビーストと、犬から変異したビーストは、"ビースト"という同じグループに属している。 (でもさ、そのビーストって元は地球上にいた生き物の突然変異体なんだろ? じゃあさ、戦い方を一律で決めるのは違うかなって思ったのよ) 「は? さっきから何言って……」 (だーかーらー! まったくアッシュ君は理解力に欠けてますなあ!) 俺の言葉を遮った奴は、自信たっぷりの声を以て説明を始めた。 「例えばさっき出てきたテンプラみたいな名前のデカいヤドカリ! ハサミをぶっ壊して殻に引っこんだ時に蓋ができないようにすれば、効率的に頭に銃弾撃ち込めんじゃん?」 頭ばっか狙うのは芸がないよと、奴はそう締めくくる。 確かに、実際あの化け物(テンプルム)と対峙した時は、頭部への攻撃が思うように当たらなかった記憶がある。 ビル等の瓦礫から作られた巨大な甲殻の中へと頭を引っ込める行動が厄介で、討伐に数時間を要したのだった。
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