3章

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「この前お前が串刺しにされたあのでっかいカマキリだってそうだよ」 壇上では、イコルギア参謀がスクリーン上に何かの動画を映し出してなにやら解説しているが、もはや内容が頭の中に入ってくることは無かった。 無駄に筋の通ったマシンガン戦術論トークによって、参謀の話に集中するのを阻止している輩がいるからだが。 「もしあいつの変異前の生物種がホントにカマキリだとしたら、あいつの視界に飛び込んでったアッシュが串刺しにされちゃうのも納得だよね」 「は……?」 「だってカマキリって視界に映る"動き"を感知して立体視してんでしょ? だから視界内で一番デカい動きをしてたアッシュが瞬殺されるのも当然なんだぞ」 そういえば、大学で生物学を専攻していた時に、カマキリは立体視ができる数少ない昆虫のうちの1種だということを聞いた気がする。 おそらく奴の言っていることは正しい。 正しい、が。 「……おい」 大きな違和感。 これまで、奴の話を聞く度に感じてきたぼんやりとしたものを、遥かに超えるそれ。 ビーストの対処法についてのやつの持論を聞いているうちに、俺は違和感の正体へ辿り着いていた。 俺の名前をいつの間にか知っていたことも、俺の好きだった歌を歌い出したことも、そして以前の戦闘の様子を知っていることも。 全てが繋がり、違和感の正体を形作る。 (どした、アッシュ?) 「お前、なんで過去のことを知って……」 「では、本ブリーフィングは終了となります。 情報を定着させ、今後の戦闘に活かしていただければ幸いです」 ブリーフィングの終了を告げるイコルギア参謀の声が、俺の問いを遮った。
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