3章

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ノスタルジックなドロップ缶のような容器を傾け、サプリを(てのひら)に落とす。 別の缶もポケットから取り出し、用意したのは計3個の真っ白な粒状サプリ。 それらを一気に口に放り込む これで今夜までの栄養は足りるのだが、まあ、なんというか。 この母艦には、脳機能をCPUに置換する技術すらあるのだ。 1粒で丸一日分の栄養を補えるサプリがあってもいいはずだろう。 どうせ、寿命が短く設定された電子機器や家電。 それらと同じ原理の販売戦略に、まんまと乗せられているんだろう。 そう考えると、サプリの無機質な苦味が少しだけ増した気がした。 そして。 (ちょっと待ってアッシュ、大事なお客さんが頭の中にいるのに食事がそれだけってことは無いよな?) 数十秒で終わった食事に対して、遠慮なく不満を吐き出すお客様(クソ野郎)がひとり。 「味なんて感じるのか」 人気(ひとけ)がないおかげで、周りの目を気にせずに奴の言葉に返答できるのは有難い。 返答すらしたくないというのが本音ではあるが。 (五感はだいたい俺も感じてるっぽい) 「今のお前に対して俺が感じてる鬱陶しさも伝わってるといいんだが」 ブリーフィングの最後に言いかけた質問。 なぜ俺の名前や過去の事柄を知っているのか。 あれは結局聞かないことにした。 判断の根拠はただの勘。 何となく、聞きたく無くなったから。 どうせこの後、何もかも分かるんだ。 努めて情報を得ようとする必要はない。 立ち上がって椅子をしまい、食堂を後にする。 行き先は、Dr.テスティモの待つ東側区画の病院。
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