4章

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ブリーフィングルームA2。 緩やかなカーブを描くテーブルと椅子の列。 それらがいく層にも連なったその先に、白塗りの教壇が腰を据えている。 薄い空色の壁のいたるところに取り付けられたスピーカーとモニターが全方位をカバーし、席に座る者への情報の伝達漏れを許さない。 最大600人のキャパシティを持つこのタイプの部屋は、主に複数の小隊が参加する合同作戦時に利用される。 たったの1個小隊32人だけでは、狩れる獲物などたかが知れている。 太古の昔から、人間は群れ、隊列を組み、連携することによって己より遥かに強大な敵に立ち向かってきた。 合同作戦。 群れを成した弱者が、圧倒的な強者を打ち倒す聖戦。 緊急と称して開かれたこのブリーフィングには、3つの小隊が集まっていた。 インド南部チェンナイの浄化装置を守る駐屯小隊である、第10小隊。 戦車や装甲車を含む機械化小隊の精鋭、第130小隊。 そして我らが第85小隊(ハチゴー)。 ひとたび後ろを振り向けば、知らない顔、顔、顔。 談笑している者もいれば、携帯端末をいじっている者もいる。 黒人もいれば、白人も、黄色人種だっている。 男性も、女性もいる。 けれど、着席している全ての人間に共通するものは、彼らが纏う歴戦の風格。 猛者のオーラ。 自分の弱さを、ヒトの無力さを、科学の愚かさを、自然の脅威を。 この5年で嫌というほど学んできた者のみが醸し出せる、堂々たる貫禄。 集団の中にいるだけで、自然と背筋が伸びてしまう。 俺なんて、そんな立派なものは何も持ち合わせていないというのに。
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