4章

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壇上に、胸にいくつかの勲章をつけた人間が立った。 今日の担当官は背が高く若々しい顔つきをしている。 見た目の年齢なんて当てにならない時代。 それでもやはり、第一印象というものは容姿に大きく左右されてしまう。 きっと彼は真面目で、厳格で、冷静。 こいつ(脳内の声)の話を聞いたら、信じるんだろうか。 「諸君、迅速な集合に感謝する。 これより、『プロフォドム』討伐作戦についてブリーフィングを行う」 目の前のモニターに、巨大な瓦礫が映された。 いや、よく見ると瓦礫の下部から8本の脚と2対の巨大なはさみが突き出ている。 幼稚な表現方法を許されるのなら、さしずめ大きなヤドカリってところだろう。 当然、このフォルムには見覚えがあった。 (こいつって、前のブリーフィングで紹介されてたテンプラヤドカリの進化系じゃね!) 俺の推測を、頭の声が勝手に代弁する。 「分かってるから黙れっつってんだろうが」 (はーい) 小声で怒りをぶつけると、やつは大人しく黙ってしまった。 他の人間がいる時は静かにしろと言ったのに、すぐこれだ。 月例ブリーフィングの内容を覚えているのに、なぜこんな大事な忠告を忘れるのか理解に苦しむ。 覚えている上で喋っているのなら、いよいよ害悪極まりない。 まあこの作戦を以て、こいつとはおさらばできるんだ。 合同作戦が立案されるということは、敵が強いということに他ならない。 つまり、基本的に1、2度の死からは逃れられない任務ということだ。 死ねば、脳内のこいつも死ぬ。 こいつのいないすっきりした脳を有する他の身体に精神を容れて、それで解決。 もう少しの辛抱。 そう言い聞かせ、担当官の話に集中することにする。
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