40人が本棚に入れています
本棚に追加
壇上に、胸にいくつかの勲章をつけた人間が立った。
今日の担当官は背が高く若々しい顔つきをしている。
見た目の年齢なんて当てにならない時代。
それでもやはり、第一印象というものは容姿に大きく左右されてしまう。
きっと彼は真面目で、厳格で、冷静。
こいつの話を聞いたら、信じるんだろうか。
「諸君、迅速な集合に感謝する。 これより、『プロフォドム』討伐作戦についてブリーフィングを行う」
目の前のモニターに、巨大な瓦礫が映された。
いや、よく見ると瓦礫の下部から8本の脚と2対の巨大なはさみが突き出ている。
幼稚な表現方法を許されるのなら、さしずめ大きなヤドカリってところだろう。
当然、このフォルムには見覚えがあった。
(こいつって、前のブリーフィングで紹介されてたテンプラヤドカリの進化系じゃね!)
俺の推測を、頭の声が勝手に代弁する。
「分かってるから黙れっつってんだろうが」
(はーい)
小声で怒りをぶつけると、やつは大人しく黙ってしまった。
他の人間がいる時は静かにしろと言ったのに、すぐこれだ。
月例ブリーフィングの内容を覚えているのに、なぜこんな大事な忠告を忘れるのか理解に苦しむ。
覚えている上で喋っているのなら、いよいよ害悪極まりない。
まあこの作戦を以て、こいつとはおさらばできるんだ。
合同作戦が立案されるということは、敵が強いということに他ならない。
つまり、基本的に1、2度の死からは逃れられない任務ということだ。
死ねば、脳内のこいつも死ぬ。
こいつのいないすっきりした脳を有する他の身体に精神を容れて、それで解決。
もう少しの辛抱。
そう言い聞かせ、担当官の話に集中することにする。
最初のコメントを投稿しよう!