4章

5/12
前へ
/201ページ
次へ
「初期作戦では、頭部への攻撃がはさみによって防がれ、決定的なダメージを与えるに至らなかった。 よって本作戦では、鋏脚(きょうきゃく)を第1攻撃目標とし、破壊次第頭部への攻撃を行う」 モニターの端に、拡大された『プロフォドム』の立派なはさみが表示された。 (ほら、アッシュ聞いた? 俺のアイデアそのまま採用されてんの!) 「……」 もうこいつに何を言っても無駄だ。 黙るという動作を司る場所が欠如でもしているんだろうな。 例によって無視をしつつ、それでもやはり少し驚いている自分がいた。 作戦立案に携わる面子には、紛れもなく最高峰の頭脳が揃っているはずだ。 経験豊富な軍の司令官、生物学の権威、その他大勢の人類の英智が議論し、検証し、資料を持ち寄り、完璧な作戦を作りあげているはずだ。 それらエリートが導き出した最適解と同じものを、彼らより前に提案していた。 最も合理的で効率的な討伐法を、誰よりも先に見つけていた。 化け物かよ。 お前の本体(脳みそ)だって完成系じゃないんだろ。 担当官の話に集中? そんなことできるわけが無い。 「今回は、最有効射程からの戦車による砲撃で仕留める」 そんな俺にはお構い無しに、ブリーフィングは進行していく。 「1個小隊がビーストをキルポイントに釘付けにし、まずは戦車砲で鋏脚を破壊。 続けて頭部へ集中攻撃。 残りの小隊は車両の護衛に当たらせる」 地図が鳥瞰視点に切り替わり、大通りの交差点に赤い円が表示された。 キルポイント。 さらには車両の移動ルート。 歩兵の展開位置。 あらゆる戦術的な情報が、いくつかの線と色によって示されていく。 「それでは、各隊の配置を説明する。 まず、ビーストを釘付けにする役は、第85小隊に──」 そこまで言いかけた担当官の視線が、席の中央列にて大きく手を挙げた男を捉える。 「その役、第10小隊(うちの連中)に任せて貰えないでしょうか!」
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加