同居人はサラサラのロン毛の男

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同居人はサラサラのロン毛の男

「挨拶早々言うのもなんだけど、ゴミの処理と分別はきちんと 行ってくれたまえ。」  その男は、税務署の七三頭の黒メガネみたいに冷たく言った。 「何、それっ、普通、同居人が女の子と知ったら、もっと他のリアクションがあるでしょうが。」  思わず、私はかみついた。  私のように若くて綺麗なスレンダー美人を言いたかっただけに、よけいである。 「別に。同居人が、男だろうが女だろうが関係ない。お互いの生活を干渉せず、共同で使う場所のルール・マナーを守ってくれるなら、どちらでもいい。あと、挨拶代わりに暴力をふるうのは勘弁してほしい。」  その男は、サラリと言い放った。  この地味に憎たらしい奴。  確かに、サラサラの黒いロン毛を後ろで束ねている。  よく見ると、細マッチョで甘いマスクのイケメンであるが、女と勝手に勘違いした自分が恥ずかしい。 「手を出したのは、謝るけどさ、驚かす方も悪いじゃん。」 「あっ、そう。ごめん。話は、そんだけ。自分の部屋に戻りたいんだけど、他には。」  まったくもって愛想がない。  やっぱ、かかと落としをお見舞いしたくなった。  この男がどう反応するか武道家としての興味もあった。 「私は空手をやっている。あんたは。」 「僕かい、昔、少林寺拳法をやっていた。じゃ、お休み。」  その男は、いそいそと自分の部屋に戻って行った。  お互い、名前も知らないまま、挨拶が終わってしまった。 「なんて、最悪な日なんだ。」  私は、台所の天井を見上げ、不動屋さんを呪った。  これが、私と彼の最初の出会いであったのである。
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