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女は度胸
私が彼と最初に出会ったのは、忘れもしない、今住んでいるシャアハウスだった。
うちの会社は女子社員の独身寮があって、私は大学を卒業して新規採用からずっとお世話になっていたのだが、何故か25歳で出ていかなければならないという決まりがあり、私は25歳の誕生日を前に少々あせっていたんだな。
間違っても結婚ではない、新しく住む家をね。
確かに、同期の女の子たちは寿結婚とかしていたが、そんなことは私には関係ない。私の恋人はアンディ様と決めているからだ。
イケメンなのは言うまでもないが、青い眼のサムライ、彼以上の武道家はいない。
あつ、ごめんさない。話を戻します。
それでっと、何軒か不動産をまわった。私は庭がある家に住みたかったから。大好きな空手の稽古を大家さんにはもちろん、隣の部屋の住人に気兼ねなく、行いたいからね。
できればサンドバッグでは物足りない。巻き藁を思いっきり突きたい。
棒の稽古もしたい。
そんな私にぴったりの物件があり、現地に案内してもらった。
少し古くて最寄りの駅から少し遠いが、私はそんなこと気にしない。
通勤がトレーニングになるからだ。
気になるのは、只一点、シャアハウスだということ。
すでに一人住人が決まっていて、不動屋さんに聞くと、詳しいことは
個人情報で教えられないとのこと。
『この野郎。』
顔面をぶん殴ってやりたかったけど、そこは我慢した。
「どうしますか。」
私は、黒縁眼鏡の意地悪な不動屋さんに決断を迫られた。
その時だった。
今となっては運命かな。神様の思し召しだ
すでに部屋で荷物を運んでさばいている人の後ろ姿が、窓越しに
庭から見えた。
肩甲骨まで届くサラサラの黒い髪。
坊主は読経・・じゃなくて、女も度胸。
愛嬌だけではこの世は生きていけない。
「ここに決めます。」
私は、決断をしたのであった。
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