3人が本棚に入れています
本棚に追加
3
待ち合わせの駅前イルカ像前には約束の10時の20分前、9時40分から僕はそこに佇んで彼女を待ち、すると5分前になって見覚えのある姿が遠方からも目に付いた。
「ごめんなさい、あの……待ちました?」
マユコちゃんは小走りで僕の前に来ると開口一番そう言った。
その姿も含めてマユコちゃんは普段通り大変可愛らしく、もし彼女が順当にアイドルデビューなんかしていた暁にはこの瞬間に僕は後ろから刺されてもおかしくないような状況だった。
けれど何より僕を驚かせたのは彼女が制服で来たことだ!
学校は休みの土曜のはずなのに制服って、どういうこと!?
しかしそのことをいきなり訊ねてよいのやら?
恋愛偏差値の低い僕にはわからず、答えは口を閉ざすことであってそのことに触れるのはやめておいた。まあ制服でも十二分過ぎるほどには可愛いのだから良いとして(だから僕は彼女の端麗さを十三分に可愛い、と言おうかとも思ったけれどそれだと13分待ったみたいに巡り巡って聞こえたら嫌なので言わなかった)、”私服を見てみたかった!”という思いも多少抱きつつであったけれど、僕たちは並んで早速歩き始めた。
そして僕がここに来た、というそれだけの事実だけでも既に、僕は彼女の手紙には答えを出しことになる。
だから以心伝心みたいに、すぐこうして一緒に歩き出すのは緊張で不自然な歩き方をしている僕の態度がなければごく自然なことのように思われた。
それでも相手を気遣うことだけは忘れぬようにとマユコちゃんに歩くペースは合わせ、盗塁狙う一塁ランナーを警戒するピッチャーみたいに僕はマユコちゃんをチラチラ見ながら歩いた。
ようやく歩く様も通常に戻ってくると、この後のデートプランをどうするか?ということを考えることに頭を使い、だが既にキャパをオーバーしかけていた低スペックの交際脳は既に根を上げかけていた。こうも早々に!!
最初のコメントを投稿しよう!