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「ときにゆうた、鏡マユコ、という子は知らんか?」
「えっ!?」
そのとき僕はドキリとした。
何だってこのタイミングで!?
しかし僕はもちろん鏡マユコちゃんのことを知っていた。
「う、うん、知ってるよ」
「なんだって!!?」
「ちょ、じいちゃんうるさいよ」
「ど、どこで知り合った!?今、どこに居る!!?」
じいちゃんはいきなり立ち上がって僕の肩を激しく揺する。
「ど、何処っていったって知らないよ!鏡さんはただのクラスメイトで」
「く、クラスメイトーっ!?」
じいちゃんの裏返った大声が響きわたり、僕は訳が分からず呆然とした。
ようやく肩を揺すられるのから開放されると、じいちゃんのほうは放心したようにぼぉーっとしている。
「……その子とは、どういった関係なんだ?」
「えっ?な、なんだよいきなり」
「どうなんだ!?好意を持っているのか!?ああっ!?」
「ど、どうしたんだよじいちゃん」
しかしじいちゃんは答えてはくれず、その力強い眼でじぃーと見つめてくる。
「じ、実は今日、手紙をもらって―」
圧が凄くて、思わず僕はぽろっとさっきの出来事を口からこぼしてしまった。
「何っ?どこだ!?」
そう言ってじいちゃんは僕の鞄を掴むと引っ張り出して「うわっ?やめてよ!」「その手紙はこの中か?」「そ、そうだけど」「見せんさい!」
「やだよっ!」
そうこう鞄の引っ張り合いになって力は均衡し、しかしこの老人は咬合力と腕力は衰え知らずらしい。
「あ、足元に猫」
じいちゃんがそう言って「えっ?」と僕がかんぴょう丸を探して視線を下げた瞬間、ふっと力を緩めた瞬間を狙われた。
「しまった!」
鞄は奪われ、「ふっふっふ」とじいちゃんはせせら笑いながら鞄を開けて例の手紙を見つけると「おっ」と声を上げて取り出した。
「やめろーっ」
それは僕だってまだ中身を見てないんだぞ。
老いぼれとてもう容赦はしない!
と、そう思ったとき。
「ほら」
じいちゃんはすんなりその手紙を僕に渡し、「えっ?」と受け取る。
「鏡マユコからか?」
その問いには反射的に頷いてしまって「しまった!」と思う時分にはとき既に遅し。
じいちゃんはニンマリして、この手紙の贈り主を即座に突き止めたわけだ。
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