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「ぜんぜん決めてないだとーっ!?」
じいちゃんは思わず立ち上がって、箸を落とす。
「ど、どうするつもりだ!!?ゆうたのデートに日本の運命かかかっているんだぞ!!」
高校生のデートひとつに日本の運命って、ずいぶんと大げさだなあと思いながらもそれを一蹴することも出来なかった。
「仕方ないだろ!僕だって、鏡さんのことはその、よく知らないんだから」
「前から好いとるわけじゃなかったのか?」
「そりゃあ、……まあ僕も、懇意に成れることをぜんぜん望んでいなかったといえば嘘になる……かも」
「ほれみろ!にもかかわらず、鏡マユコのことをぜんぜん知らないとは、どういうことだ?」
「う、煩いなあ、そんなのは何とかするよ!」
「なんとかって?」
僕はご飯を掻き込み、さっと食べ終えるとすぐに立ち上がって「おい、ゆうたっ!」というじいちゃんの呼びかけを無視して早々に自室へと引き下げて行った。
それから布団に横になって天井をじっと見つめながら、あともう1時間半後に迫ったデートについて思いを馳せていた。
もう余り時間はないのだ。
ここで悩んでも仕方ない。
なあに相手を怒らせなければいいのだろう。
そんなの、普通のデートだって一緒だ。
「にゃー」
気づけばかんぴょう丸が部屋に入ってきていてベッドの傍にまで寄ってくる。
「おいで、かんぴょう丸!」
僕は上半身を起こし、あぐらのなかにかんぴょう丸を呼ぶ。
「にゃー」
かんぴょう丸はぴょんと身のこなし優雅にジャンプするとベッドの上。僕のひざの中に吸い込まれるように入り込み、そこで丸くなった。
頭をなでてやるとゴロゴロと気持ちよさそうに喉を鳴らす。
きっと大丈夫だ。
僕は自分に言い聞かせるようにして自分へと発破をかけ、今日のデートの成功を思い描いた。
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