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「大丈夫、君は幸せになれるよ」
初めて新しいご主人様にかけてもらった言葉が、今も僕の胸に残っている。
ご主人様、あなたは今、幸せですか?
僕はずっと劣悪な環境で暮らしてきた。
掃除もほとんどされないケージの中で、1日中じっとしていた。吠えてはいけない。ご主人様に怒られるから。
「ごらぁ!ピーピーうるせーぞ鳥共!」
さえずったインコ達が、ご主人様から罵声を受けた。
『懲りないわね、インコ達は』
隣のケージのペルシャ猫が、こっそり僕に耳打ちする。彼女は高貴な猫の筈だが、体は薄汚れていて、高貴のコの字も見当たらなかった。
『ご主人様も厳しすぎるんだよ。すぐイライラして僕らに当たるから…』
僕がそう答えると、彼女はウンウンと頷いた。
『早く、本物のご主人様が欲しいわね。こんな所ではなく、私達をちゃんと飼育してくれるご主人様が。ま、私の方が売れるの早いかな。あんた耳が欠けてるし、気持ち悪いから人間受けは悪いかな』
勝ち誇った様に僕にそういうと、彼女は何日も替えてもらっていない水を飲んだ。不味いと呟きながら…。
ご主人様かと僕は考えた。
本物のご主人様に出会えたら、僕は元気にボールで遊びたいな。あと、広い場所で駆けずり回りたい。ご主人様にお腹を撫でて貰いたいし、ご飯も沢山食べたい。
でも、僕のその夢は叶うだろうか?
僕は何故か耳が欠けた状態で生まれて来てしまった。まるで人間の子供に耳をパクッと食べられてしまったみたいに、片耳だけ丸く欠けた状態なのだ。
その為、たまにご主人候補がここに来ても、「わー!気持ち悪ーい」と冷やかされ、そのまま帰ってしまうのだ。僕って、そんなに気持ち悪いかな?
現在の僕達のご主人様は、店の外で煙草を吸っている。あー…暇だなと呟きながら。
暇なら、僕達のケージを掃除して、ご飯もちゃんと用意して欲しいなと、僕は思った。
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