幸を掴む

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ご主人様が帰って、店の中が暗くなると、店内の動物達は一斉に騒ぎ出す。 『腹へったー!』 『ペットシート替えて欲しい!』 『そろそろ水槽洗って欲しい!』 『げっ!大事に食ってた餌カビてんじゃん!』 ワンワン!ニャーニャー!ピッピッピピピ! ご主人様が居ると言えない事を、みんなが一斉に喋り出す。 『もう汚い水の中で泳ぎたくないー』と金魚が言うと、同じく水の中に住んでいる亀が同意した。 『俺、もう5日食ってない…』とウサギが言うと、私も僕もとほとんどの動物達が同意した。 『ご主人様は僕達の事嫌いなんじゃないかな。まともに飼育してくれないし』僕がそういうと、『金を生み出す道具としか思ってないんじゃね?俺らは一応商品なんだし』とハムスターが答えた。 『でもさー、商品なら大事にして欲しいよな。昼間ちょっとさえずっただけで怒るなよな』と言ったのは、昼間うるさいと怒られていたインコ達だった。 みんな不満を抱えて生きていた。でも、商品として生きている僕達にはそれを解決する力は無かった。ご飯を食べたい、清潔に暮らしたい、たったそれだけの願いも自分で叶える事は出来ないのだ。だって、動物だから。 だからみんな望んでいる。本物のご主人様を。 ふと、僕は隣を見た。ペルシャ猫は寝てるのだろうか?みんなが愚痴を吐いている中、彼女だけ何も言っていない。そして僕は驚いた。彼女は体を横にして苦しんでいた。 『ペルシャ猫ちゃん!大丈夫か!』 僕の呼び掛けに彼女は首を横に振った。 どうして?昼間は元気だったのに…。 店内がざわつき始めた。 『ペルシャちゃんどうしたの?』 『急病?』 『諦めちゃダメ!生きて!』 『頑張れ!死ぬな!』 店内が励ましの声に溢れたが、彼女は時が経つにつれて弱っていった。そして、ご主人様が出勤してくる頃に、彼女は夢を叶えられないまま死んでしまった。 「何だよ、死んでんじゃねーよ。お前一番高かったのによー。売れれば金になったのによー」 僕の隣が死んでる事に気付いたご主人様は、出勤早々文句を言いながらケージに手をかけて、店の奥に運んで行った。そして暫くすると、何かが入った小さなゴミ袋を持って出てきて、店から出ていった。 僕はそれが何か分かって、悲しくなった。 そして恐怖も感じた。夢が叶わなければ、僕も同じ目に合うかもしれないと。
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