幸を掴む

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新しいご主人様の家に着くと、部屋の中は既に僕を迎える用意をしてあった。犬用のご飯、ベット、オモチャ。犬を飼育する準備は出来ている様だった。テーブルの上には、ボロボロの犬の飼育本まで置いてあった。 僕は良い人が飼い主になってくれたと、安心した。 「大丈夫、君は幸せになれるよ。これからは安心してここで暮らしてね」 床に座って、僕の目を見てそう言ってくれるご主人様はニコッと微笑んだ。 その言葉に甘えてベットまで歩き、その場でくつろいでいると、目の前に大量のご飯が差し出された。 「あの店じゃほとんど食べれなかったでしょ?今日は沢山食べてね。明日から普通の量にして、しつけもスタートするね」 僕は大喜びでご飯に飛び付いた。こんなに沢山ご飯を食べたのは生まれて初めてだった。 ガツガツとご飯を食べる僕に、新しいご主人様は更に話を続ける。 「そうだ、名前。君はあんな過酷な環境に居たんだもんね。これからは幸せになって欲しいから、幸せな男と書いて、サチオなんてどう?」 幸せな男か…うん、良い名前! 僕は喜んでワン!と返事をした。 お腹がいっぱいになり、これからは何不自由なく暮らしていけると思ったら、急に眠くなってきた。ウトウトし始めた僕の頭を撫でながら、新しいご主人様は、「本当は全部の動物を助けたかったんだけどね…それは無理だから取り合えず君だけ…だって、君が一番…」 そこまで聞いて、僕は寝落ちてしまった。
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