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「177センチでしたか。辰は160センチ台でしたよね」
「170センチあるわっ、ボっ」
ボケと続くはずだった言葉は傍にいた先輩の手に塞がれた。
「あははは、沢城さん、何か用でも」
辰と話をしていた男が訪ね、沢城はわざとらしくそうでしたと口にする。
「瀬尾のことで辰に話しがありましてね」
「わかりました」
塞がれていた手が離れて、男は二人から離れた。
怪我をしたと聞いた時も特にい心配しなかった。負ったものの自己責任だと思っていたからだ。
だが、その怪我は辰のせいだと聞き、助けられたことに腹を立てた。
しかし、その後に零がさらに酷い怪我を負わせたというのだ。流石に落ち着かない。
「瀬尾の怪我、どうなんですか?」
「病院を抜け出して余計な傷を作ったようです。立派に忠犬としての役目を果たしているようでなによりです」
嫌な言い方をする男だ。
瀬尾にとって帰るべき場所は零の元だった。だから怪我をしてでも戻ってきた。
その気持ちはわからなくない。自分だって帰るべき場所はここだから戻りたいと思う。
だから沢城の言い方が気にくわなかった。
「沢城さん、そういう言い方、ねぇんじゃないですか?」
ぎゅっと拳を握りしめ怒りに耐える。
「怪我は自己責任なのでは?」
冷ややかな目で見られ、カッと熱が上がる。
「そうだよっ」
むかついて壁を殴れば、その手をつかまれてひねり上げられた。
「くっ」
普段は部屋で閉じこもっているだけなのに。
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