苦手な男にかまわれる

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 みかじめ料の徴収をするために店を回っているときに若衆の一人に聞いた話だ。  沢城は烏丸と親戚であり、しかも零の兄と同い年で小学から一緒の学校に通いつるんでいたのだという。  家が家だけに中・高と喧嘩三昧。そのまま組に入るかとおもいきや、三年になると喧嘩をやめて勉強をし始めた。  その後は大学に進み、計理士として資格を取ったときいたのだが、ある日、インテリ眼鏡になった戻ってきたそうだ。  零が組を作るからと彼の兄が沢城を呼んだ。本部長として組の事務を任せたいからと。  そのままカタギとして暮らせるのなら、その方がよかったのではないだろうか。辰のように行き場所がないわけではないのだから。  それでもこの世界に足を踏み入れるほどの魅力が零にあったのか、それとも親戚だからだろうか。 「沢城さんはどうしてこの世界に入ったんですか」  煙草をポケットから取り出して一本咥える。辰は素早くポケットからライターを取り出して火をつけた。 「珍しいですね。私のことを聞くなんて」  煙を吐き出して薄笑いを浮かべる。  興味なんてないでしょうと、言われている気がしてしまう。  そう、ただなんとなく気になっただけだ。 「足を踏み入れるだけの魅力が零様に感じたのですよ」  だが、沢城はこたえてくれた。そのことに辰は驚いた。 「なんですか、貴方が聞いてきたから答えてさしあげたのに」 「あ、いやぁ、そうだったんですねぇ」  つい、軽い言い方をしてしまい、沢城の眉間にしわが寄る。 「はぁ、なんでこんなのに振り回されているんでしょうか」  ため息とともにネクタイをほどき床へと落とす。
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