ドブの神様

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美香はしぶしぶテレビを消し、履き古しのデニムとTシャツに着替えた。二重にゴム手袋をし、口には大きなマスクを付けた。長靴を履き、バケツと大きなスコップを持って裏玄関を出た。 ドブは裏玄関と隣家との間を走っている。表面は真っ黒く濁り、猛暑のせいもありものすごい悪臭を放っている。 「うえっなにこの臭い最悪ー」 美香はスコップをドブに突っ込んだ。ヘドロがかなり溜まっているらしく、スコップはずぶずぶと奥まで沈み込んだ。 「うわすごい溜まってるじゃん。何時間かかるの最悪ー」 ヘドロをスコップですくい、バケツに入れる。バケツがいっぱいになったら、歩いて1分ほどの廃棄許可済の畑に捨てる、というのが地区の決まりだった。スコップを突っ込むたびにさらに強烈な悪臭が立ち昇った。 「おえっ臭い最悪ー暑くて手袋が蒸れて気持ち悪いし」 美香はゴム手袋を脱いだ。その拍子に指輪がドブに落ちた。 「あああーッ!」
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