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2話 部活の様子
「俺は今日も部活があんの。だから遊ぶなら2人で行きなよ。」
「はぁ!?おま...中学の時なんか休みまくってただろ!何だよ~せっかく受験終わりの遊びなのに。」
「...ハルト、付き合い悪い。」
「え、待って、ミナトもめんどくさいって言ってなかった!?え!?言ってたよね!?」
俺達はいつもこんな感じだ。中学生であっても、受験生であっても、高校生であっても。いつもダイワが引っ張り、俺が巻き込まれ、ミナトはめんどくさそうにしながらノリノリで乗ってくる。...でも、俺はあの子に恋をした。いつまでも中学生テンションではない。大人にならないと。大人になってあの子の隣で胸を張れるような男になりたい。だから...
「やっぱりごめん、今日は無理だ。」
「ふーん...。分かったよ、じゃあまた今度な!」
ダイワはいつも強引だけど、引くときは引いてくれる。だから険悪な雰囲気になったことがない。あっさり話が終わるのだ。
「じゃ、俺とミナトで行くか!」
「嫌だよ、ダイワうるさいから。」
ミナトのことなんて、てんで無視してダイワはよっしゃ行くぞ~と張り切っている。それを見て、いつも通りだなぁと少し安心に似た気持ちがし、ふと笑みがこぼれる。すると、
「あ、そうだったそうだった。」
ダイワがこちらに向き直り、悪戯な顔をして言った。
「もし、上手くいったらその彼女、俺らにもちゃんと紹介しろよ~!」
「はぁ!!?ちょ、おい!!」
行ってしまった...。ダイワは本当に勘がいいのか悪いのか分からない。
「ミオ先輩。」
「ん?どうしたの、分からないところでもあった?」
「はい!えっと、このカメラのズームとピント合わせが...」
「あぁ、最初は使いづらいよね。」
ずっとサッカーだった俺はカメラのことはてんでダメで、よくミオ先輩に教えてもらっていた。写真部には女子が多く、男子は俺とダイスケ先輩だけ。でも、俺はミオ先輩に聞きに行くことに努め、ダイスケ先輩とは趣味の話をして、毎日楽しくやっている。ミオ先輩は、
「ちょっと、カメラ借りるね。」
と近づいてきた。カメラには首に下げるヒモがあり、俺はわざと首にかけていた。だって、その方がミオ先輩が近づいてきてくれて、お互いの距離が少しでも近くなるから。...でもミオ先輩はいつもある程度の距離感をキープしていた。
「もう、ここは慣れだろうからな~。あ、ピント合わせはこのボタンを押せば...」
それでも距離が縮まったことに変わりはない。ミオ先輩は俺より10センチくらい小さくて、全てが細い。男と女では骨格の作りから違うのだろう。それにすごく良い香りがする。同じクラスの、香水をつけまくった女子や、やたら甘ったるい匂いのする女子とは違い、さわやかな甘さの香りがする。その香りにドキドキして、でも気づかれたくなくて、そっぽを向いてしまう。
「...ルト君?おーい、ハルトくーん?」
「あ、...え?」
「え?じゃないよ。全く...ちゃんと聞いてた?」
「あ、あ~...はい!」
「嘘つかない!!」
「すみませんでした!」
全く、という言いながらミオ先輩はクスクスと笑っている。う、うわ~、それずるい。可愛い過ぎて直視できない俺は目を泳がせる。すると、そこでミオ先輩の友達であり部長のミサキ先輩の声がかかる。
「は~い、今日の部活はここまで!ありがとうございましたー。」
「「ありがとうございましたー。」」
もうそんな時間か...。俺は毎日毎日この先輩後輩の関係から進めずにいる。進みたいと思う一方で、もう少しこのまま安全な関係でいたいと望んでしまうのだ。男のくせにナヨナヨしいなんて言う人もいるかもしれない。でも、そんな事言われても俺は進めないのだ。はぁ、自分がこんなにも意気地なしとは。自分で自分が笑えるよ。
また次の日、また次の日。俺はずっとこの関係から抜けだせないのだろうか。そんな悩みが毎日のように続いた。
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