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不意に僕は歩く方向を変え、少年らを正面に捉えてポトポトと近付く。
そんなことをすれば当然彼らは僕を警戒し、難色を示す。
それでも彼らが即座に逃げ出さないのは、僕が黒服のヒットマンでなく身長の低い十六歳の少年であることが幸いしているのだろう。
そのまま僕はしゃがみ込み、リュックから紙袋を取り出して彼らの足元にポスッと置く。食べかけの、ビスケットの袋だ。
こんなものでも、受け取り手によっては十分な価値を生む――少なくとも、金銭よりは。
次の瞬間にも、既に紙袋はその場所になく、少年らは僕をやや訝しげに睨みつけた後、そそくさと暗い道の奥に消えていった。
馬鹿なことをするものだと、誰かが言ったかもしれない。実際その通りだ。
僕はまだ何も知らないのだろう。何故、弱いものは死ななければならず、強いものは生きようとするのか。
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