にわか雨

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 空模様を取ってつけたような表情で、僕は土の道を歩いていた。  勿論、ドゥーショに出くわしたらヤバいというのは理解していたから、帰る途中だった。みんなのいる廃教会に。  ヤバいことは理解していた。だから、声を掛けた方がいいと思ったんだ。 「……ルカ。誰かと、話していたの。」  そこにはルカがいた。話していたと言っても、周囲には誰もいない。何となく、そう思っただけだ。  ルカは一瞬驚いたように僕を見て、焦って周囲を見回す。  随分、怯んでいるように見えた。 「ここにいたら危ない。教会に戻ろう。」  そう言って僕は、右手をルカに差し出した。ルカは朝から様子が変だったから、引かれないかと心配しながら。  然し弾き出されたのは、意外な言葉だった。 「チーシャオ。少し、時間をくれないか。」  いつしか降り出していた雨が、ルカの頬をツウと伝った。  僕らは、雨宿りのできる廃教会の裏手に移動した。
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