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快適な雨だ。
こんな時だからというのもあって口は回らなかったけれど、ルカとこうして他愛もない話を続けられることは感謝すべきことなのだろう。
そうやって、ルカが落ち着くのを待った。何か大事な話が始まる予感が、なんとなくしていた。
もしかしたらそれは、この日常を壊しうることかもしれない。けれど、それ以上にルカを救いたい気持ちが大きかった。
……そう言えば。
リュックをガサゴソと探ると、やはりそれは出てきた。
手のひらほどの大きさのお菓子箱。スナックやチョコのように思うかもしれない。
側面にはでかでかと、「SALMIAKKI」の文字。
「ルカ、これ食べなよ。」
元気でるよ、と言いたげに僕はそれを進めた。実際ソレは僕の好物である。
箱を振ると、黒い塊が愛らしく飛び出してきた。飴のようにも、硬いグミのようにも思える。
ルカは一瞬嫌悪感を顕にしたが、僕がそれを食べて見せると、同じように口に放りこんだ。
だが、すぐにルカの顔は捻じ曲がる。
「まず……っ! いや……っ、はぁ?」
飲み込んでしまったらしく、ルカはゲホゲホと咳き込む。そして、必死の形相で僕を睨みつけた。
不味い、なんてことがあるだろうか? こんなに美味しいものが。僕は素知らぬふうにもう一個口に含む。
するとルカは呆れたように肩を竦めた。なんだか馬鹿にされているような気がしないでもないが、さっきまでの思い詰めた表情は見る影もなかった。
「はい。特別に一箱プレゼント。」
「いら……いや、貰っとく。」
ルカはサルミアッキを心底有り難そうに受け取ると、「代わりに」と言って首に下げていたペンダントを僕の手の中に押し込んだ。
こんなもの、貰っていいのだろうか。特段高価なものには見えないが、ルカが常にこのペンダントをしているのを見てきたから。
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