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曇り
態々、水たまりを踏んで歩く馬鹿もいないだろう。
いつもより少し重い雲の下、ザアザアと騒がしい風の吹く街を僕と彼は二人で歩いていた。なんてことのない、ただの朝の散歩だ。
お世辞にも、綺麗な場所とは言えない街。
上辺だけ賑やかで、中身はどす黒く汚れた街。
忙しなく行き交う人々を路地から見つめる数人の少年と目が合った。ボロ切れを纏い、見るに堪えないほど痩せ細っている。
観光客の隙を窺っているようでその実、彼らの目は羨ましそうに他人の背中を追っている。
態々、水たまりを踏んで歩く馬鹿はいない。
彼らを可哀想などと思ってやるやつはいないし、手を差し伸べてやるやつもいない。
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