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ぐずついた空
僕を救った人がいた。
彼にとっては、何十と差し伸べた手のうちの一つであったとしても、僕にとってはたった一度きりの温もりであった。
石の上で凍えて眠っていた僕を救い出した男の名は、フィラフト。
その日から僕は、「エクヴォーリ」の一員だった。
フィラフトさんも、ライラナさんも、ルカも、みんな家族だ。
フィラフトさんは僕に居場所も知識もくれた。僕は、フィラフトさんに従ってさえいられればそれで良かった。それが幸せだったし、同時に誇りでもあった。
だから、彼は。彼だけは。例え死の跋扈するこの街だとしても、死ぬなんてことは有り得なかったのだ。
もしかしたらあの時、僕も一緒に死んでいたのかもしれないな。
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