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そんな、大きすぎる喪失感を胸に、僕は立っていた。堕ちた十字架が、虚しく朽ちていた。顔から首にかけてヒリヒリと痛むのは、きっと無意識のうちに掻き毟っていたせいだろうな。
目の前には、フィラフトさんがいた。彼は、神々しい髪を大きく広げて、もう二度と開くことの無い眼で、僕の心を見通しているようだった。
フィラフトさん、フィラフトさん。僕はこれから、どうすればいいのですか。
そんな下らない質問に、死人は答えてくれなかった。
その廃れた教会を後にして、僕はフラフラしていた。
「……弔い。」廃教会でライラナさんが言った言葉を、繰り返してみる。
どこかピンと来ていない自分がいるのを感じた。仇討ちというのが、何故か喉につっかえて通らなかった。だからといって、何をすべきかなど分からないのだけど。
路傍で、幼い男の子が僕を羨ましそうに見つめていた。
幸い、ビスケットはまだ数枚残っている。手持ちの食料が無くなるまで、今日は配り続けるのだろうな、と自分で思った。勿論、フィラフトさんがしていたことの二番煎じなのだが。
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