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「姿を見せるも何も、私はここにいますよ」
「ここって……どこ?」
私は耳に手をあてて、声がする方向を探った。
ベッドの下の隙間? ううん、もうちょっと手前。
サイドテーブルの中? でもそこに人が隠れられるスペースなんてない。
「もうちょっと上ですよ」
謎の声に言われて、私は視線をちょっと上に移す。
でもサイドテーブルの上には、誕生日プレゼントのコンパクトが置いてあるだけで――。
「そう、そこです」
コンパクトがゆっくりと揺れて、ひとりでに開く。
鏡がキラッと光った。
「コンパクトが……しゃべった!?」
私はびっくりして、すぐに駆け寄ってコンパクトを手に取る。
糸がついていて誰かが引っ張り上げたとかじゃないみたい。
ってことは、もしかして魔法のコンパクト?
「すごーい! モノがしゃべるなんて!」
ここは魔女の村だから、しゃべるネコだとかフクロウだとかはいっぱいいる。
魔法でしゃべれるようにして、使い魔として使うためだ。
だけど、動物じゃないモノが、こんなにしっかりしゃべる魔法なんて!
「初めて見た! すっごーいすっごーい!」
「わわ、乱暴に扱わないでください。鏡ですので、割れてしまっては大変です」
いろんな角度から眺めてみていると、魔法のコンパクトが諭すように言った。
あ、それもそうか。
私はサイドテーブルにそっとコンパクトを置いた。
「オホン。改めまして」
魔法のコンパクトは、コンパクトのくせに勿体つけて咳払いなんかしちゃって。
そして落ち着いた調子で自己紹介を始める。
「お初にお目にかかります。私は魔法の鏡、ミスター・ミラーと申します。よろしくお願いいたします――世界一かわいい魔女・アプル」
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