りんごの魔女アプル

4/18
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
「姿を見せるも何も、私はここにいますよ」 「ここって……どこ?」  私は耳に手をあてて、声がする方向を探った。  ベッドの下の隙間? ううん、もうちょっと手前。  サイドテーブルの中? でもそこに人が隠れられるスペースなんてない。 「もうちょっと上ですよ」  謎の声に言われて、私は視線をちょっと上に移す。  でもサイドテーブルの上には、誕生日プレゼントのコンパクトが置いてあるだけで――。 「そう、そこです」  コンパクトがゆっくりと揺れて、ひとりでに開く。  鏡がキラッと光った。 「コンパクトが……しゃべった!?」  私はびっくりして、すぐに駆け寄ってコンパクトを手に取る。  糸がついていて誰かが引っ張り上げたとかじゃないみたい。  ってことは、もしかして魔法のコンパクト? 「すごーい! モノがしゃべるなんて!」  ここは魔女の村だから、しゃべるネコだとかフクロウだとかはいっぱいいる。  魔法でしゃべれるようにして、使い魔として使うためだ。  だけど、動物じゃないモノが、こんなにしっかりしゃべる魔法なんて! 「初めて見た! すっごーいすっごーい!」 「わわ、乱暴に扱わないでください。鏡ですので、割れてしまっては大変です」  いろんな角度から眺めてみていると、魔法のコンパクトが諭すように言った。  あ、それもそうか。  私はサイドテーブルにそっとコンパクトを置いた。 「オホン。改めまして」  魔法のコンパクトは、コンパクトのくせに勿体つけて咳払いなんかしちゃって。  そして落ち着いた調子で自己紹介を始める。 「お初にお目にかかります。私は魔法の鏡、ミスター・ミラーと申します。よろしくお願いいたします――世界一かわいい魔女・アプル」
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!