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「おーい、アプル。アップルパイが焼けたから降りといで」
下の階からママの呼ぶ声が聞こえた。
それと同時にオーブンを開けたみたいで、温かいりんごジャムのいい香りが漂ってくる。
あっ、まずい。
「まだ着替えてない! どうしよう!」
「どうしようって……今すぐ着替えればいいでしょう」
「もう、ミスター・ミラーはわかってないなぁ!」
私はむっとして、ほっぺたをふくらませた。
「だって今日は一生で一番ステキな日なんだよ? 一生で一番ステキな服を着たいに決まってるじゃない!」
「なるほど。それでどの服を着たらいいか悩んでいる、と」
「そうなの。でもずっと悩んでたらアップルパイが冷めちゃう!」
一生で一番ステキは日に、一生で一番ステキな服を取るか、一生で一番ステキなアップルパイを取るか。
なんでこんなことで悩まないといけないの!
「そのクローゼットの中にある服で、一番ステキな組み合わせがよいのですね?」
「うん、そうだけど」
「それなら、このようなコーディネートはいかがでしょうか?」
ミスター・ミラーがそう言うと、コンパクトの下半分にある宝石がキラッと光った。(普通ならパフとかファンデーションとかがあるところが、なんで宝石なんだろう?)
宝石から光がこぼれだして、私の身体を包む。
「きゃあっ!?」
さすがにビックリして、短く悲鳴を上げる。
でも、次の瞬間。
私の服はクローゼットの中で一番ゴージャスな淡いピンクのワンピースに変わっていたの!
ううん、ただゴージャスなだけじゃなくて、シンプルなジーンズのボレロとワンポイントのりんごのペンダントまで合わさって――。
「――すごい! このワンピース、こんなにかわいい着方ができたんだ!」
「ふふふ、お褒めにあずかり光栄にございます」
すごいすごい! これなら文句なしに一番ステキな服だよ!
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