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南は難しい顔で唸っている。真壁の言葉を受けて、どのように返すか悩んでいるのだろう。彼女の方がよっぽどか誠実だ。
「真壁さんは、いつも自分の歌に悩んでますよね。今の自分が正しいかどうか、ずっと悩んで試行錯誤している。それは悪いことではないです。だからこそ良い方向に変われるんですから。そういう真壁さんの性格が、顔にも歌にも表れてるじゃないですか。真壁さんは真っ直ぐな人です。だから信用できるんです」
「南は俺を買いかぶりすぎだよ。俺は、南が思うよりも優柔不断で、不誠実だよ」
「いいえ。真壁さんが何を隠していても、どんな嘘を吐いていても、これだけは否定させませんよ。真壁さんは誠実で、信用できる人です。そして、あたしにとって貴重な友人なんです。それだけは変わりません!」
南は、答えに辿り着いたと言わんばかりの満面の笑みを浮かべていた。
南は嘘を吐かない奴だ。本当に真壁のことを、信用が出来る人だと思ってくれている。
彼女があまりにも嬉しそうなので、真壁もつられて吹き出した。
南は真壁を貴重な存在だと言っていた。それは南にとっての事実だ。他人には否定できない。
真壁にとっての南も失い難い存在だ。何かを隠していることを察知しながらも、自分のことを誠実な友人だと言ってくれた。今まで彼女がかけてくれた全ての誉め言葉を上回る、最大級の賛辞だ。
いつか、彼女には伝えようと真壁は決意した。
自分が今考えていたこと、彼女をどう思っているのかも。自分の全てを。
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