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真壁と南は、同じ大学のアカペラサークルに所属する、一年違いの先輩後輩の間柄だ。
南は真壁に懐いている。事ある毎に真壁を褒め称え、行動を共にしようとついてくるのだ。真壁も最初こそはその勢いに引いていたが、彼女の行動に裏がないことを知り、今では仲の良い友人という関係に収まっている。
南がアカペラサークルに入ることを決めたのも、真壁の存在があったからだ。南はサークルに入ったきっかけを問われる度、目を輝かせながら一言一句違わぬ返答をいつも繰り返した。
「真壁さんの印象が本当に強かったんです。歌がすごく上手いのに自分に酔ってる感じがしないの! 真っ直ぐな歌声で音程もバッチリ取れてるし声の安定感もあって、とにかくあたし、真壁さんみたいな人と一緒に歌いたいなって思ったんです!」
真壁は当時、歌が上手いと言われたことも、自分の歌い方を褒められたことも初めてだった。声に華のある奴が同期に多く、取り立てて目立ったことがなかったからだ。それに、自分の歌に自信がなかったので、これくらいはできて当たり前だと思っていた。……自信が無いのは今も変わらないが。
真壁が彼女の言葉を真正面から受け取るまでに、かなり時間がかかった。南の人となりが理解できている今ならまだしも、出会って間もないのに激賞されても、おべっかを言われているようで気分が悪かったのを覚えている。
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