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そのあとどうやら、ランチタイム。
女生徒たちが、ぞろぞろと連れ立って、なにか大きな石造りの建物に入っていく。適当に流れでついていくと、そこは明らかに、なにか、異国情緒あふれるクラシックな食堂スペースになっており―― 天井の高い、吹き抜けの石のホール――
そこに、いわゆる「ビュッフェスタイル」で、奥側のカウンターにならんだ各種料理から、それぞれ好きなモノを選べる形式っぽいが――
うわ、でも、微妙。
なにか、よくわからない、チーズっぽい匂いのする赤いカタマリとか、何の肉だか不明な、油のキツそうな揚げ物料理とか。スープもこれ、何種類もあって、色もこれは見た目がエグい。見た感じ、いかにもスパイシーこの上ない感じで――
『かわるかわるかわるのにょだ! あたしにここは、まかせてくれたらよいよいぞ?』
頭の中に声が響く。
ああ。あの、動物耳のワフーっていう女の子の声だ。
『たべたいたべたい、たべたいにょ。かわってくれにゃのだ!』
『あ、いい? 代わっても? むしろなんか、わたし的にはこういうエスニック系の異国料理めんどくさくて。代わってもらえるなら大歓迎だよ――』
わたしがその――
かわってほしい! を強く思った瞬間――
視界が急に暗くなって、わたしはまた、あの、
ぽつんと椅子のあるだけの、あの、がらんとした暗い場所に戻っている。
いま、スポットライトのあたるその椅子の上には、ワフーが座って。
わたしは、ネメという、あの無表情な女の子のとなりで、
その暗いスペースの床に、ぺたっと所在なさげに座っている。
ああ、でも。ここからも、見えるのは見える。
なにか特殊なシアターみたいな感じで――
いまワフーが―― いや、シャーラが、というほうがいいのかな?
その子が見ている視界が、そこに、映画のスクリーンっぽく、少し遠くに見えている。
「これもこれもこれも、これも欲しいのにゃ!」
シャーラ(ワフー)が豪快に手づかみで、そこに並んだ料理をがんがん皿に盛っていく。
「ちょ、シャーラ??」「まあ、汚い!」「そ、手は、さすがにマズいでしょ…」
まわりで騒いでいる女子たちは完全にスルーして、、
そこのテーブルにどしっと座り、山盛りの、なんだか大ボリュームの「猫まんま」みたいな、すべてをぶっかけた巨大ミックスごはんを。
ワフーが―― いや、シャーラが、か。ガツガツ、ぐいぐい、食べている。
「うまうま、うまいのにゃー! しあわせにゃー!」
シャーラ(ワフー)は大満足だけど―― まわりに座った女子たちが、ドン引きの表情でシャーラを見ている。ま、そりゃそうだよね。。
「ちょっとあなた! 下品にもほどがありますわ。人の迷惑を―― もっとマナーを、少しは、あなたの足りない頭で考えたら――」
あ。また来た。さっき、詩の授業のとき、嫌がらせでわたしを指名した、あの顔のキツい美人さん。髪はサラサラ長く、とても気合入れて手入れした細い眉毛をギュッとつり上げて、シャーラの腕をガシッとつかんだ。
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