わたしとワフーとネメのこと。~恋するシャーラの物語~

5/43
前へ
/43ページ
次へ
 そのあとどうやら、ランチタイム。  女生徒たちが、ぞろぞろと連れ立って、なにか大きな石造りの建物に入っていく。適当に流れでついていくと、そこは明らかに、なにか、異国情緒あふれるクラシックな食堂スペースになっており―― 天井の高い、吹き抜けの石のホール――  そこに、いわゆる「ビュッフェスタイル」で、奥側のカウンターにならんだ各種料理から、それぞれ好きなモノを選べる形式っぽいが――  うわ、でも、微妙。  なにか、よくわからない、チーズっぽい匂いのする赤いカタマリとか、何の肉だか不明な、油のキツそうな揚げ物料理とか。スープもこれ、何種類もあって、色もこれは見た目がエグい。見た感じ、いかにもスパイシーこの上ない感じで―― 『かわるかわるかわるのにょだ! あたしにここは、まかせてくれたらよいよいぞ?』  頭の中に声が響く。  ああ。あの、動物耳のワフーっていう女の子の声だ。 『たべたいたべたい、たべたいにょ。かわってくれにゃのだ!』 『あ、いい? 代わっても? むしろなんか、わたし的にはこういうエスニック系の異国料理めんどくさくて。代わってもらえるなら大歓迎だよ――』 わたしがその―― かわってほしい! を強く思った瞬間―― 視界が急に暗くなって、わたしはまた、あの、 ぽつんと椅子のあるだけの、あの、がらんとした暗い場所に戻っている。 いま、スポットライトのあたるその椅子の上には、ワフーが座って。 わたしは、ネメという、あの無表情な女の子のとなりで、 その暗いスペースの床に、ぺたっと所在なさげに座っている。 ああ、でも。ここからも、見えるのは見える。 なにか特殊なシアターみたいな感じで―― いまワフーが―― いや、シャーラが、というほうがいいのかな? その子が見ている視界が、そこに、映画のスクリーンっぽく、少し遠くに見えている。 「これもこれもこれも、これも欲しいのにゃ!」  シャーラ(ワフー)が豪快に手づかみで、そこに並んだ料理をがんがん皿に盛っていく。 「ちょ、シャーラ??」「まあ、汚い!」「そ、手は、さすがにマズいでしょ…」  まわりで騒いでいる女子たちは完全にスルーして、、  そこのテーブルにどしっと座り、山盛りの、なんだか大ボリュームの「猫まんま」みたいな、すべてをぶっかけた巨大ミックスごはんを。  ワフーが―― いや、シャーラが、か。ガツガツ、ぐいぐい、食べている。 「うまうま、うまいのにゃー! しあわせにゃー!」  シャーラ(ワフー)は大満足だけど―― まわりに座った女子たちが、ドン引きの表情でシャーラを見ている。ま、そりゃそうだよね。。 「ちょっとあなた! 下品にもほどがありますわ。人の迷惑を―― もっとマナーを、少しは、あなたの足りない頭で考えたら――」  あ。また来た。さっき、詩の授業のとき、嫌がらせでわたしを指名した、あの顔のキツい美人さん。髪はサラサラ長く、とても気合入れて手入れした細い眉毛をギュッとつり上げて、シャーラの腕をガシッとつかんだ。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加