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19 Keigo.side
酒を浴びるように飲んで、倒れるように寝て、毎日それを繰り返すそんな毎日に、とうとう終止符が降りたのかと思った。
だって、頭痛と吐き気の中目を覚ました俺の目の前には、真さんの姿があったから。
「真、さん…?」
「…久しぶり、ヤス」
ずっと聞きたかったその声に名前を呼ばれて、溢れるように、涙が止まらなかった。
「変わってないな、何にも」
「…変えられないよ、何も」
真さんが生きていた証を、消すことなんて出来ない。
真さんが生きていたことを、俺の隣で笑っていたことを、忘れることなんて出来るはずもない。
「…やっと会えたね、真さん」
元気そうで良かった。
天国での生活は辛くない?
聞きたいことは沢山あったけど、どれも言葉にならない。
やっと会えたのに、まだどこかしこりの残る心に、俺は戸惑っていた。
「何か、物足りないって顔だな」
「……そんなことないよ。そんなわけない。
やっと、会えたんだから」
物足りない…?
そんなわけない。
俺は、あの日からずっとこの日を待ち望んできたんだ。
やっと願いが叶ったのに…
真さんの物足りないという言葉を、俺は否定しながらも、どこか納得してしまっていた。
「…確かに、やっと会えたんだけどさ…俺は、そんなに長く、ここにはいられない」
「え…?」
「ヤス、俺はさ…
ヤスのことが、本当に本当に大好きだった。だから、天国でも、最初は死んだことを受け入れられなくて、自棄になったりしてたんだ。
…天国にいる人達は優しくてさ…。皆が、俺を支えてくれた。
でも、それでも俺は立ち直れなくて…周りに当たり散らして…本当に、どうしようもなかった」
俺も、同じだった。
真さんを失った時の俺は、どうしようもないくらい荒れて、酷い状態だった。
そんな生活を変えてくれたのは…
「そんな俺を変えてくれたのは、天国から見る、ヤスの笑顔だった」
「っ……」
「でも、その笑顔を作ったのは、俺じゃない。ヤスも、同じだったんだろ?」
『俺じゃない誰かの笑顔に、救われたんだよな』
真さんは、何もかもわかっているみたいだった。
「真、さん…」
「あの子は、俺じゃない。どれだけ顔や声が似てても、別の人間なんだよ。…でも、やっぱり似てるのかもな。
同じ人を、同じように愛してるんだから」
「………」
「なぁヤス、自分の気持ちを、誤魔化すなよ。ヤスにとって、あの子はもう、俺の代わりなんかじゃないだろ?」
「真さん…」
「…幸せになれよ。あの子と、二人で。ちゃんと、マコくん自身を、愛してあげてくれよ」
『俺は天国で、二人が笑顔で会いに来てくれるのをずっと待ってるから』
真さんはそう言って、白い光の中に、消えてしまった。
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