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「これ、持って帰って」 「…ありがとうございます」 お義母さんは帰り際に、タッパーに入った肉じゃがを渡してくれた。 その味は、真さんが作ってくれる肉じゃがに、よく似ている。 俺と付き合うまで包丁さえ握ったことがなかった真さんが、まず初めにお義母さんに習ったのが肉じゃがだったそうだ。 最初に作ってくれた時は、味が薄かったり、じゃがいもが固かったり散々だったけど、世界一、美味しい料理だと思った。 「真さん…」 事故現場には今も尚、沢山の花束が手向けられている。 色とりどりの花達が綺麗であればあるほど、哀しかった。 「…?」 不意に、小さな犬の鳴き声がして、隣に目を向けた。 そこには、真さんの髪の色によく似た毛色の子犬がいて、じっと俺を見つめていた。 その大きな瞳も、真さんによく似ている。 「………」 俺は暫く、その犬から目が離せなかった。 まるで、真さんがそこにいるような…そんな、哀しい、不思議な感覚だった。
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