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「真、さん……?」 「………」 ゆっくりと、近づいてくる。 「…真さんなの?」 立ち止まって、俺のことをじっと見つめている。 ………俺は、疲れてるのかもしれない。 いや、さっき飲んだ酒のせいで俺はいつの間にか眠ってしまって、夢を見ているんだ。 きっとそうだ。 望みを掛けて頬をつねると、ジワリと鈍い痛みが広がった。 夢、じゃない… 「そんなことしたら、痛いよ? 」 そう言って、頬に触れてきた指先は、温かかった。 不意に、最後に触れた真さんの指の冷たさが、脳裏に過ぎる。 もう二度と、温もりを取り戻すことのない肌が怖くて、痛くて、涙さえ出なかった。 「……っ…」 あの時、流れなかった涙が、何故か今になって止めどなく溢れ出してきて、その温かい指に促されるように、俺は、やっと泣くことが出来た。
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