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「家賃払ってください」
……困ったな、どうしよう。
私は頭を抱えた。
「私は契約していません」
そう言うと、相手は顔を赤くした。
「そんな嘘は通用しません。あなたがここに住んでいることは事実。家賃滞納も事実です」
「……あなたが大家なんですか?」
私はおそるおそる聞いてみる。
「そうですが…… 。あなた、住んでいるのにそんなことも知らないなんて」
今度は哀れむような目で見られた。
「すみません。私はなんというか、責任者?じゃなくて……借主ではないので」
「おや、そうだったのですか。では家族の人?」
「うーん。そんなようなものです」
これで何とかなりそうだ、と安心すると。
「では立て替えてください」
と書類らしきものにサインを求められた。
いやいや、払うなんて無理だ!
そもそもお金なんて持ってきていない。
「ここの借主、全然家賃を払わなくて困っているんです。
何度も連絡しているのですが、返事が返ってこなくて」
「……そうだったのですか」
そりゃそうだ。こんな大家知らないのだから。
「それにしても、ここの借主には困ったものですなぁ」
「はぁ……なんかすみません」
「連帯保証人はいないのですか?」
「はい……その辺よく分からなくて」
相手はあからさまに困った。
このままでは埒が明かないな。
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