ノック、ノック

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「あれ、さっきからずっと鳴っているんです」と受付がおずおずと言いました。 流石に……風の音だろう。内心そう思った矢先。 トントン とノックが響きました。 二度目は、確実に何かが叩いている音でした。 ……ノックしている? 自動ドアは全く開く気配がありません。外で強い風が吹いているようにも見えません。 私はドアを確認しようと足を踏み出そうとして、すぐさま身を引きました。 私が行って自動ドアが作動したら『叩いている何か』が入ってくるかもしれないからです。 だから先程、受付嬢は帰宅する私を止めたのです。 私はその場で硬直してしまいました。 「どうしましょう……」と受付嬢が呟き、私たちは目を見合わせました。 そのとき。 私たちが目を離した隙にウィーンとドアが開きました。 部長でした。 私たちを見て「ちょっと忘れ物をな」と照れ臭そうに言う部長。警告する暇もありませんでした。すでに部長は自動ドアを開け、何事もなくエントランスへと入っているのです。 「ドア閉めて!」と焦る受付嬢。 「……閉めるってなんだよ」と笑う部長。 ダダダダダダダダダ と大きな足音が響き、その場の皆が静まり返りました。 足音は私たちの誰のものでもありません。 隣に立っていた受付嬢は叫び声をあげ、通路の奥へ走ってしまいました。 困惑する部長の背中を押しながら私は受付嬢を追いかけました。
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