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予定がなくなった翌日、僕は8時に起きてリビングへ行く。
お母さんが朝ごはんを作って待っている。
「お母さん、おはよう」
お母さんはいつも綺麗だ。
今日は綺麗なワンピースを着て髪は上品なハーフアップ、化粧は控えめでリップはオレンジ。
「おはよう、ガク」
お母さんは僕を抱きしめて頭を撫でる。
「今日も美味しそう。いただきます。」
僕は笑顔を作って椅子に座る。
「ガクは本当にいい子ね。その美味しそうに食べる姿、お母さん大好きよ。」
僕は笑う。
「僕も、お母さんのこと大好きだよ。今日もすっごく綺麗。オレンジのリップが可愛い。」
お母さんは驚いたように笑った後、弾むような足取りで僕を今度は後ろから抱きしめる。
いつも僕の口からはお母さんを喜ばせる言葉が自動的に出る。
誰のための言葉なのだろうか。
お母さんのため、いや、僕自身のためだ。
僕が僕を守るために、20年そうやって生きてきたんだ。
「可愛い子。」
皿の上のウインナーが口に運ばれるのを僕は頬張った。
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