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「旨い。」 僕は素直に感想を言う。 リキは黙って食べている。 この料理だって、リキが自分で作ったんだと思うと羨ましいし、悔しくなる。 僕は包丁を握ったことさえない。 彼女のことは僕からもリキからも何も言わない。 リキが僕から何を奪っても、僕は何も言えない。 リキが欲しいものを僕はずっと与えられていたんだから。 「リキ、今度の試験なんだけど。」 「いいよ、出てやるよ。」 「…ありがとう。」 僕が医学部に入れたのも、留年せずにいられるのもリキのおかげだ。 僕は勉強ができない。 勉強だけじゃない。 僕は何一つ自分でできやしない。 「この際授業もゼミも全部俺が出てやろうか。」 独り言のようにリキが言う。 僕は黙ってご飯を食べる。 リキのように生活できたらどんなに良いだろうか。 僕たちが入れ替わっても気付く人なんていない。 …お母さんを除いては。
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