勇者さまに選ばれた理由

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ドアノブをひねり押すが開かない。 引くタイプかと引くが開かない。 もしかしてスライド式かと横に押すが開かない。 シャッター方式かと持ち上げようとしたが開かない。 何これ? 「お茶をどうぞ」 店員は先程俺が座っていた方向に顔を向けたまま話かけている。 何だかわからないことにイライラして文句を言ってやろうと店員の顔を覗きこんだ。 「ちょっといい加減に」 俺は言葉を失った。 この店員さんめちゃくちゃ可愛い。 黒髪の艶やかなセミロングに吸い込まれそうな大きな瞳。 アイドルのような万人を虜にする笑顔。 守ってあげたくなるような華奢な細いライン。 俺の人生でこんなに可愛い人と二人っきりになれた瞬間など今までなかった。 そう思うと何だか急に恥ずかしくなった。 しかし怒る態度を見せた手前、可愛いから怒る気がなくなったとは言えない。 どうしよう。
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