幸せに決まった形はない

1/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
 かわいい子と一緒に過ごす。それが幸せの一つの形だとすれば、僕はその幸せを味わうことが出来る。それは彼女と一緒に水着になって真っ白な砂浜に行くことから始まる。それから二人してビーチパラソルを立て二つのデッキチェアを日陰になった所に置いて彼女と座り、周辺に注がれる太陽の光や空間の熱気や海の眺めや潮の香りや波の音や水平線の上に広がる空の眺めやクーラーボックスから取り出した缶ビールのプルリングを開けた時のプシ、シュワーという音、そしてビールを飲み、何本も飲む。これらの要素が重複して複合して化学反応を起こして上手い具合に酔った時に彼女の顔を一瞥する。すると、その須臾の間、錯視してデコレイティブにデフォルメされた彼女に見惚れる。この僅かなひと時の内に幸せを感じ、噛みしめ、反芻するのだ。  しかし、この幸せは斯様に入り混じっていて作り出すのが面倒だし儚いものだ。おまけに一切皆苦と仏陀が言ったように思い通りにならないのが人生というものだから一瞬の幻夢すら見れずに終わることもある。だから態々海に出かけるのは射幸心を煽られるような心理が働かない限り億劫になりがちだ。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!