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新しく誕生したジャンパーチャイルドに伴って現れたアーキタイプにより、K県郊外の街が丸ごと呑み込まれた。との報に、起きたばかりの俺は驚きを通り越して間抜けな顔をして対応していた。
「……で、被害は」
『例によって、この規模でも人的被害はありませんでした。が、街が丸ごとですから、物的には、それは、もう……』
言いづらそうに、据え置き端末の画面の中で区切り区切りエージェント・マルシャが答える。
『住人はともかくとして、もう街ごと艤装にしてしまえば良いのでは。と言う案も出ています』
「それはまた、剛毅だね」
そう答えながら、俺は朝食と着替えもそこそこにプライベートモビリティに乗り込み、マルシャの姿をそちらのディスプレイに移した。
『アドレスを送ります。では、お気を付けて』
「はいはい。現場でね」
画面が変転し、住所確認。大体20分というところか。
俺はモビリティのアクセルを踏み込み、ベランダから飛び立った。
地球人類が宇宙に進出して100年。太陽系をヨチヨチ歩きしていた我々を哀れんだのか、ビッグ・ママ。またはパパ。あるいは神。超越知性? 宇宙の王?(まあろくに観測されてない存在はどうでもいい)は、あるギフトを贈ってくれた。
ジャンパーチャイルド。そしてアーキタイプ。
生得的にワープ出来る”ひと”と、その乗り物。
これを、全世界は皆で育てることにした。
世界の果てのような村で誕生した第一号のその子は、可愛い赤ちゃんだったからね。
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