エクソシズム

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 生贄(サクリフェス)として悪魔に奉げられた人間の中には、悪魔に入り込まれてもその悪魔を精神力でのみ撃退し、特殊な能力(ビースト)そして武器(アルム)の二つを手にする者が存在する。彼等は悪魔を倒すために戦う祓い師(エクソシスト)と呼ばれている。    兄貴(かなで)琥珀(こはく)がいなくなった、俺には上に二人のきょうだい、兄貴と姉貴がいる、兄貴とは父親が違って、外見は全然似ていない、姉貴にいたっては会ったことも無い。兄貴は姉貴を探すと言って、戻らなかった。俺は兄貴が姉貴を探してある宗教団体の建物に向かったことを突き止め、そこへ向かった、しかし、この宗教団体が崇拝しているのは神ではなく悪魔で、俺はそれの生贄(サクリフェス)に選ばれてしまった。 「その身を奉げる事を光栄に思いなさい」  真っ白な薄い服を着せられ、鳥かごのような檻に入れられる。周りの人たちは何か分けのわからないことを口にしている。 兄貴もここで生贄にされたのか?  儀式が進むに連れてどんどん息苦しくなって、頭痛もしてきた、手の平を見ると黒いアザのようなものが蛇のようにうねっている、気持ち悪い、足にはムチで打たれるような痛みもはしる。 兄貴会いたいよ・・・  意識は途切れ、気がつくと病室のような場所のベッドに寝ていた、いくつか並べられたベッドにも何人か同じくらいの歳の人間が寝ているが、体の所々がおかしい。まさかと思って腕を見ると 「うわーーーーーーーー!!!!」  思わず大声をあげる、それも無理は無い、腕は蛇の鱗がびっしりだったのだから、触ってみると、シールなどでは無く本当に肌が蛇になっているともが分かる。よく見ると足もそうだ 「なんで、さっきので移植かなんかされた?」 「起きたか?」  部屋に入ってきたのは、腰くらいまである銀髪を高い位置でポニーテールにして黒い長袖のタートルネック、スカーフを巻いたような膝丈まである紫色のワンピース、足が隠れるくらいの黒いロングブーツ。シルバーで作られ真珠で飾られたロザリオをくびからかけている。目の下に十字架のマークがついている女性。 「よく、生残れたね」  そう言って頭を撫でてくれた。鏡を見ると虎にも目の下に十字架がある。 「それは悪魔に打ち勝った証だ」 「あの、あなたは?」 「俺は戦場ヶ原(せんじょうがはら)真珠(しんじゅ)だ、他の者達からはモルテ、イタリア語で死神を意味する言葉で呼ばれている、一応人間だから安心しろ」  真珠は色々と説明した、虎たちはあの団体から保護されたこと、皆からだの一部が動物のようになっているのは、悪魔が取り付いた後遺症だと言うこと、そして目の下にある十字架は、悪魔に打ち勝った証であること。 「君達には二つの特殊な能力が宿ったはずだ、身体にでた動物の特徴、何の動物かによってできることは違う」 「じゃあ俺の蛇は?」 「そうだな、電気を消してみるか」  この部屋には窓が無い、電気を消せば何も見えなくなる。しかし 「見える、見た目とかじゃなくて、温度で、サーモグラフィーみたいだ!」 「おそらく、蛇に出来る事は大抵できるだろう、これが一つ、そして、思い出したくないと思うが、儀式のとき何か痛みの中で、道具を使って攻撃されるようなものはあったか?」  そのにいた保護された者達は口々に「何か銃のようなのもで撃たれるような」「刃物で切られるような」「紐で締め付けられるような」と次々に言っていく、虎もムチで打たれるような痛みを思い出す。 「それがもう一つの能力、特殊な力を持つ武器の具現化」  真珠が手首を少し回すと、本当に死神が持っているような大鎌が突然現れる。 「俺たちは祓い師(エクソシスト)神に仕えながら悪魔祓いをしている、悪魔に打ち勝っても、悪魔のかけた呪は身体に残っているので、神聖なる教会で浄化しなくては、呪いに殺されてしまうからな、しかも人と契約している悪魔の数だけ我々の呪いも強まる、次々祓っていかなくてはならない、最終的には全悪魔の破滅、または封印を目指している」 「他の祓い師(エクソシスト)には会えますか?」 「会えるが、どうしてだ?」 「兄貴と姉貴が居るかもしれない・・・」 「そうか、ここでは自分の本名を名乗れない、司教どのに仮名をいただいたら自由に探していい」 俺の名前は戦慄(せんりつ)珊瑚(さんご)か・・・名前な、一度だけ兄貴に姉貴の名前聞いたことあるけどなんだっけ、たしか綺麗な緑色の名前だったんだよな。 「たしか、戦慄だったか、きょうだいのいなくなった時期と地域を言えば、あそこで何か情報がもらえるかも知れんぞ」 「戦場ヶ原さん、ありがとうございます!」  虎もとい珊瑚は大急ぎで情報があるか聞きに行く 「やけにあいつの事気にかけるな死神」 「こんな死神に絡んでくるのはお前くらいだぞ、海神」 「だって、皆死神って聞いただけで逃げるじゃん、あいつ以外」 「はぁー」  真珠はため息をついて、任務へ向かった。 あいつは、不思議だな懐かしい気持ちになる。 「げー、時期と地域だけじゃあんなり絞れてない何人いるんだよ」  ここにきて渡された服を着た、白いシャツに赤いネクタイ渋い緑のセーター丈の長い紫と黒のパーカーには背中に大きな十字架が刺繍されている。お守りだといって十字架の片耳ピアスも渡された。 「珍しいよな」 「なにが?」 「俺犬の(ビースト)だから匂いで感情が分かるんだけど、死神が何というか、ほっこりとしてんだよ、こう何というか懐かしい思い出に浸ってると言うか」 「死神が?!」  ここに元からいる先輩達からは本当に死神と呼ばれているそうだ 「戦場ヶ原さん」 「どうした」 「向こうで先輩達が話してたんですけど、なんか思い出に浸ってるみたいだって」 「俺は感情はあまり表に出ないタイプだと思っていたんだがな」 「新入りのなかに知ってる人でも居たんですか?」  少し間をおいてから真珠はこたえた 「知っている人間はいなかったが、どうも戦慄が俺の弟に似ていて仕方ない、もうこの世にはいないのに、その面影を追ってしまうんだ」 「すみません」 「いや、いいよ、俺が勝手に話したんだ、それに弟の死因は悪魔に精神力で勝てなかったことだ、弟のように死ぬ人間を減らしたいと強く思った、俺を強くしたのは弟戦場ヶ原(せんじょうがはら)水晶(すいしょう)なんだ」 「それは弟さんの本名ですか?」 「いや、勝手につけた仮名だ」 「死神なんか海神が探して騒いでたぞ」 「今いく、じゃあな」 死神なんて名前似合わない人だな  確かに彼女の大鎌を持った姿は、死神のようだが、死なせたくない人たちがいるその心は、正反対のものだ。 「新入り、お前死神と普通に話せるなんて結構やるじゃねえか!」 「私達なんて、名前だけで避けてしまったのに」  先輩たちは優しくて、楽しい人たちだったが、なんとなく笑顔に無理があるようにも感じられた  半年もするとかなり二つの能力を使うのにもなれ、実際に悪魔祓いをすることを許可された、ただし、まだ素人なので○神と呼ばれる、上階級の先輩について来てもらうことを条件に。 「戦場ヶ原さん、一緒に来てください」  そして真珠も死神と呼ばれる上階級の人間だ 「別にかまわんが」 「よっしゃ!」 「死神初めてじゃないか新人連れて行くの!」 「うるさい海神、言ってくる者がいなかっただけだ」 「「「戦場ヶ原さん俺らも」」」  珊瑚の同期はなんとなく珊瑚と話している真珠を見ているため普通に話しかけられるようになっていた。 「こんだけ人数いるんだし、俺も行く」  そういって海神もついて来る事になった。 「後輩の足を引っ張るなよ」 「俺が足手まといかよ?!」  任務におくられたのは、以前珊瑚が呪を埋め込まれた宗教団体とかかわりが深い場所だった。 「なんかここ毒虫や蛇とかの死骸多くないですか?」 「リョウメンスクナを知っているか、昔呪を掛けるために、人間奇形のを使って蠱毒という、いわば、同じ部屋に解禁し殺し合いをさせた、その結果残ったのが二つの顔四本の手を持った人間、その呪は恐ろしいほどに強力で今でもどこかに封印されているのだと言う、蠱毒は本来、毒虫などを100種類一つの壺につめて共食いをさせる、そして最後に生残った蟲を供物にする、それだけでも恐ろしいのにそれを人間で行ったんだ」 「この大量の蟲が、人間で行う蠱毒の練習だいだとしたらやべーな」  考えただけでもぞっとする、 「リョウメンスクナの呪が漏れ出したときに、大震災が起こったといわれている、ここにいるものでは太刀打ちできんだろう」  そして奥へと進んでいくと、あったのは大量の悪魔に負けた人間の成れの果て、祓い師(エクソシスト)異常に体が人外と化した者達、もう息をひきとっているであろう遺体がそこら中に転がっている。 「これ、本当に人間で蠱毒をやったあと?」  怯える新人に対して、真珠は遺体に手を合わせてから髪を上げて額を見る。 「まだだな、目だった外傷は無いし、額に皆同じ印が描かれている、これは、蘇生させようとしているんだ」 「悪魔に負けた分俺達以上に呪が染み付いてる、祓い師(エクソシスト)異常に悪魔の力が強いはず、それを頼りに戦っているんだ、こんなにいっぺんに襲い掛かってきたらひとたまりもないぞ」  珍しく海神が冷静である。 「しかし、蘇生させても生きていた頃の意識には戻れないだろう、魂はここにあるが、完全に悪魔が包み込んでしまっている、自身が誰なのか分かるかどうか・・・ん?」 「戦場ヶ原さんどうしたんですか?」 「こいつ・・・」  珊瑚の呼びかけにもこたえず、真珠は一つの遺体に近づく。 「水晶・・・」  戦場ヶ原・水晶、以前弟の仮名だと言っていた。真珠は遺体が首からかけている、星型のペンダントをてにとって、その名を口にした。 あれ、この人がつけてるペンダントどこかで。 「なあ、死神ここに遺体があるのもおかしくないか?」  海神がそう言うのも、悪魔の力を宿した者は、生きていようと死んでいようと、供物にされる。そのやる方は大体燃やされるのが一般的で、遺体は普通残らないのだ。 「そうだな、ここは一旦、教会へ戻って大司教様に報告したほうが・・・」 「理由教えてあげるから、もうちょっとゆっくりしていきなよ」  聞き覚えのあるようなないような声だった。珊瑚は動揺した、だってそのにいたのは、自分に呪がかけられた日、その儀式に参加していた者だったから。 「ここにいる遺体は全部、自分が器のありそうな者を見つけて引き渡した、失敗したものは供物にするよう見せかけて、こうやって持ち帰っていたのさ、そして、自分が渡した人間が儀式に出るときだけ、見に行った、どうなるか気になってね」  それはつまり 「珊瑚、どうした」 「俺はこいつのせいで、あの儀式に・・・・」 「お....のか」 「戦場ヶ原さん?」  真珠は小さく何かをつぶやいて、返事をすることなく武器(アルム)を呼び出し大声で言った 「お前が水晶を、琥珀を売ったのか!!」  真珠は武器(アルム)である大鎌を持って飛掛るが、バリアのようなもので届かない 「君が死神か、かなり強力な武器(アルム)だね、琥珀とは、奏・琥珀君のことかい、そういえば君の弟だったね森谷(もりや)翡翠(ひすい)」 こいつ、名前を覚えてやがった!!? 「森谷・翡翠って・・・」 「珊瑚?」 思い出した「姉貴の名前だ・・・」 「(かなで)(とら)が同じ母から生まれたきょうだいであることには気付いてたんじゃないのか?」 「ああ、長男に、琥珀にそっくりだよ!」 なんで、そっくりなんて言うんだ、俺と兄貴は父親が違って全く似てないよ、皆兄弟になんて見えないって言うんだよ、どうして、戦場ヶ原さんが俺の姉貴でそれに気付いてたんなら、どうして 「なんで、言ってくれなかったんだよ」  真珠が、死神が大鎌を振る度に、建物に亀裂がはいり、今にも崩れてしまいそうな揺れを感じる。 すまない珊瑚、いや虎、私は死神なんて物騒な名前で呼べれる自分の弟であることに気づかないでいてほしかった、死神と呼ばれるのは武器(アルム)であるこの大鎌のせいだけじゃない、人間を救出しに行ったとき、保護対象が悪魔に負けると判断すれば、その体と魂の縁を切った、悪魔にのっとられる前にと、そう思って、つまり殺したんだ。 「人殺しの弟なんて知って欲しくなかった」 ゴメンな、虎、琥珀「姉さんは悪くない、謝らないで」? 「おい後輩このままじゃ危険だ、脱出するぞ!」 「戦場ヶ原さんを置いて行けない!」 「そうですよ!」 「おれ、連れて行きます」  珊瑚は使えるようになった武器(アルム)である鞭を使い、空中戦を繰り広げる真珠の足に巻きつけ、そのまま連れて脱出した。 「戦場ヶ原さん意識が!」 「おそらく武器(アルム)の使いすぎだ、自在に操れるとはいえ、元はといえば呪だからな」 「なあ、珊瑚、戦場ヶ原さんの本名、森谷・翡翠が姉の名前ってマジなのか?」 「ああ、兄貴に聞いたことがある、姉貴の顔を知らないから、本当かどうかは分からないけど」 「可能性は高い、死神は弟が二人いて次男にはあったことが無いと話していたからな」 姉弟であったとしたら、あのときの遺体は兄貴、もう兄貴は死んでいることになる。帰って、真実を確認して、本当に戦場ヶ原さんが俺の姉貴なら、大司教様に頼んで俺の仮名、戦場ヶ原・珊瑚に変えてもらおう、これからもこの辛い悪魔祓いは続く
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