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#01 レイニーデイ
――ザザザザザ――ッ
その世界では、いつも雨が降っていた。
――バチッ
「痛ッた! ちょっと零士! 傘、振り回さないでよ! 雨がかかったでしょ!」
「あん? うっせーなあ~死にゃあしねえって」
「はーあ? 雨で電脳がバグったらどーしてくれんの? アンタみたいに元から壊れてる電脳なら構わないでしょうけどね!」
「んだと陽子っ!」
その世界では、いつも雨が降っていた。
電子的ノイズを含んだ雨が―――。
あらゆるネットワーク、情報端末を破壊した電子世界大戦終結から20年。人々はガーデンと呼ばれる電子障壁に囲まれた閉鎖領域で生活していた。
能勢零士と、本条陽子は戦後生まれの市立光明高校2回生だ。
「でも真面目な話、アンタいいかげん傘変えたほうが良いんじゃない? その情報表示なによ。404とか表示されてるケド……狂ってるでしょ」
「うっせーな、こんなん振りゃあ直るんだよ」
「だから! それがダメっつてんでしょーが!」
雨にはノイズとよばれる破壊的ナノマシーンが含まれている。だから脳の一部を電脳化していた人類は電脳感染を恐れ、傘型情報端末――通称アンブレラを装備していた。これは見た目としては、過去に存在したビニール傘に近いもので、傘をすっぽりと被ってしまっても、周りを見ながら歩くことができる。そして、内側はモニターとなっていて、さまざまな情報が映し出されるのだ。
「ね、ねえ……零士……」
「んだよ、まだ文句か? これはなあオヤジの形見の傘なんだよ!」
「う、ううん……そうじゃなくて……あれ……」
「――え?」
それは異様な光景だった。
ガーデンにはいつにも増して強い雨が降っている。
予報ではノイズ含有率が80%を超える危険な雨だ。
そのノイズレインの中、立っている者の姿があったのだ。
しかも――
その人物は……傘をさしていなかった。
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