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第1話 署名捺印は慎重に
「海翔くん、私と付き合ってくださいっっっ」
高浜海翔は高校入学早々、中学からの同級生山下敬子に告白された。
中学の時は異性ながらも仲が良かったけど、そんな素振りなんか感じたことも無かった。
「うん、いいよ。実は俺も敬子と付き合いたいって思ってたから嬉しいよ！」
「そうなんだ！良かった～」
敬子は満面の笑みを浮かべた。可愛い。以前から可愛いと思っていたけど、彼女になったこの瞬間から可愛さが２倍増しになった。
「じゃあこれに……」
敬子は鞄の中から何やら紙を取り出した。
「署名捺印をお願いします」
そこには『交際届』と書かれていた。
「交際届？」
「うん！結婚したら婚姻届を書くでしょ、交際したら交際届を書くのよ！」
「そうなんだ、じゃあさっそく書くよ！」
念願の人生初彼女からの初めてのお願い、もちろん断る理由なんか無い。
俺は敬子から用紙を受け取ると、さっそく自分の名前を書き込んだ。そこには判子を押す箇所もあった。
「判子を持ってないんだけど、どうしよう？」
「大丈夫よ！海翔くんの判子はこれ！」
敬子は鞄から海翔の名字である高浜の三文判と朱肉を取り出した。
すでに敬子の署名捺印はされている。お遊びみたいな事なんだろうけど、判子まで用意してるなんて可愛いことするよな～、と思いながら俺は判子をポンっと押した。
「これで良いの？」
「うん！嬉しい！」
敬子は交際届を嬉しそうにじっくりと眺めてから言った。
「じゃあ今から生徒会室に行こう！」
「え？生徒会室？」
「そう！生徒会室！」
わけの分からないまま生徒会室に連れて行かれる海翔。
「失礼しまーす」
生徒会室の扉を開け、挨拶もそこそこに生徒会長の元へ連れて行かれた。
「交際届の提出に来ました！」
「え？提出？」
海翔の疑問は無視して敬子は交際届を生徒会長に渡した。
「確認しますね」
生徒会長は交際届を受け取るとじっくりと眺めた。そして、
「はい、問題有りません」
と言うと受理日付の印と生徒会長の印をポンっポンっと押した。
『おめでとうございま～す』
会長をはじめ副会長や書記も拍手をしながら声を揃えて祝福してくれた。
「これであなた方の交際は正式に受理されました。晴れて生徒会公認カップル誕生です」
「やった～、ありがとうございます！」
敬子は嬉しそうにお礼を言ったあと、振り返って言った。
「さあ海翔、これで今からアンタは私に束縛されるのよ」
「え？」
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