26人が本棚に入れています
本棚に追加
最終話 心得その１９９
「もう疲れたよ、別れたい」
本当は別れたいとまでは思って無いけど、疲れたのは本当だ。ここでピシッと言ってやる。もし別れることになっても構うもんか。
「え？海翔、何を言ってるの？」
「だいたい交際届ってなんなんだよ？」
「中学の時からずっと待ってたのにアンタが全然告ってくれないからでしょっ。仕方ないから私から告ったけど、不安だから……アンタをがっちりと掴んでおくための交際届よっ」
「どんだけ俺のこと好きなの？」
「はあ？ア、アンタ馬鹿じゃないの？口を慎みなさいよっ」
「その上から目線の喋り方も嫌だ、そんなの敬子じゃないよ」
「ご、ごめんなさい」
「もう嫌だ、別れる」
「待ってよ、ごめんね海翔、交際届を出したせいでこんなことに……しくしく」
あれ？嘘泣きじゃなくて本当に泣き始めた。ごめんね敬子、キツく言い過ぎたよ。
「じゃあこうしよう。今から生徒会室に行って交際届を取り消して貰おうよ！」
「ごめんね」
「うん、もう良いよ、大丈夫だよ。生徒会室に行こう！交際届を取り消してもらって普通に付き合おうよ！」
「だから……」
「うん？」
「ごめんね」
謝り続ける敬子。取り消して貰えば大丈夫なんだけど？
「違うの、交際届なんだけどね……」
「うん？」
「取り消せないの」
「はい？」
取り消せないとはどういうことだ？
「交際の心得の最後を読んで……」
「交際の心得その１９９ 交際届の有効期間は本校在籍中とする。なお、ひとたび届け出た者はこれを取り消すことは出来ない……」
「え？これはどういうこと？」
「そのままの意味よ。交際届はね、その取り消しどころか交際自体を取り消せないの……つまりね、この学校に在籍中は私たち別れることは出来ないのよ！」
つまりどうしても別れるなら退学しなきゃダメってこと？！
急に元気になる敬子。
「ふふん、仕方ないわよね！署名捺印したんだから！同意したものと見なされるんだから！海翔、卒業するまで心得をしっかり遵守してよ！私好みの旦那さんにしつけてあげるわ。私はアンタを絶対離さないんだからねっ！」
ｰｰおしまいｰｰ
最初のコメントを投稿しよう！