初めての男女交際でこんなにしつけられるとは

第2話 同意したものとみなすほど怖いものは無い

「敬子、これはいったいどういうこと？」

「呼び捨てってどういうつもり？敬子さんと呼びなさいよ。アンタは交際届に署名捺印したんだから、今から私に束縛されるのよ」

　何を言ってるのか分からない。

　海翔(かいと)は生徒会長を見た。生徒会長はすっと未記入の新しい交際届を海翔に渡した。

「詳しくは裏面を見てください」

「はい」

　生徒会長から手渡された交際届の裏面には「交際の心得」とタイトルがあり、その下にはぎっしりと小さい文字が書いてあった。

一番最初の行には

（遵守しなければならない男女交際の心得）

一番最後の行には

（署名捺印した時点で上記交際の心得全てに同意したものとみなす）

と書いてある。

「え？なにこれ？読んで無いよ」

「読んだかどうかは知らないわ。でも署名捺印したんだから同意したってことよ」

「え、そんな……」

「同意だけじゃないわよ、生徒会長の印が押されて生徒会規約の効力も生じたんだからね」

　海翔は生徒会長を見た。会長はその通りと黙って頷(うなず)いていた。

『生徒会規約　第百八十条
　交際届罰則規定

（第一項）　交際届の同意事項を遵守せざる者は職員会議の議題として生徒会から報告され生徒指導室にて教員による指導の対象となる
（第二項）　繰り返し遵守せざるものは職員会議にかけられ学年主任の判断により停学処分となる
（第三項）　改善の見込みがないと判断された場合は学校長の判断により退学処分となる』

「ほら、書いてあるでしょ」

　敬子は繰り返し読み込んで既にボロボロになっている生徒手帳を海翔に見せた。

　なんだこの規約は？普通は不純異性交遊で退学とかじゃないのか？

「アンタ、生徒手帳も読み込んでないの？駄目じゃないの。入学したらすぐに読み込んでおくのが生徒の努めでしょ。家に帰ったら交際の心得と生徒会規約の男女交際に関するところを遅滞なく速(すみ)やかにしっかりと読み込んでおきなさいよ」

　はいどうぞ、と生徒会長は未記入の新しい交際届を渡してくれた。さっき提出した交際届を渡してくれたらすぐに破るのに……。