初めての男女交際でこんなにしつけられるとは

第3話 交際の心得は文字が多いし小さいから読む気がしないよ

「さあ、行くわよ海翔(かいと)」

　敬子とは中学の時から付き合いたいと思っていたから、交際すること自体は嫌じゃないけど、今の状況は納得出来ないことだらけだ。

　扉の前で敬子が急に立ち止まった。

「うん？」

「んっ」

「え？」

「んっ！」

　扉のほうを顎で差す敬子。

「扉を開けなさいよ、海翔」

　これじゃ男女交際じゃなくて下僕(げぼく)だ。そう思いつつも海翔は扉を開けた。

『お幸せに～』

　２人は生徒会役員たちの拍手と祝福を受けながら生徒会室を出た。

「敬子、わけがわかんないんだけど……」

「呼び捨て禁止」

「敬子さん、わけがわかんないんですけど」

「もう一度言うわよ。明日までに交際の心得と生徒会規約の男女交際に関する個所をしっかり読み込んでおきなさい」

「うん……」

「アンタってスマホで新しいゲーム始めるとき、何も読まずに『同意する』をタップしてチュートリアルに進むタイプでしょ」

「うん、チュートリアルに時間がかかるから同意事項は読まずに先に進むよ」

「スマホの中の個人情報を全て収集します」

「はい？」

「そう書かれていても同意したことになるのよ」

「公式アプリでそんなこと有り得ないよ」

「甘いわね。絶対に無いとは言い切れないわ。将来私の旦那さんになりたいなら、もっと慎重にならないと駄目よ。しっかり読んでから同意する人になりなさい」

「え？旦那さん？」

「う、うるさいっ」

　帰宅した海翔は交際届の裏面をチラ見したが、文字が小さくて読む気がしない。

　読まなくても敬子と付き合えるわけだし、そんなことよりゲームだ。交際の心得や生徒会規約は何か問題が起きたときに読めばいいや。